はじめに
最初にTRI KongTong I2を聴いたとき、
思った以上に早く、あることに気づいた。
――低域が、きちんと鳴っている。
12mmの平面磁界型ドライバー。
正直なところ、スペックを見た段階では
「低域は控えめだろう」と予想していた。
実際、これまで聴いてきた平面IEMの多くは、
サイズに関係なく低音が軽い、あるいは量感を抑えたチューニングが多かった。
だがTRI KongTong I2は違った。
サブベースは自然に沈み、ミッドベースも痩せない。
しかも、量で押してくるのではなく、音楽の土台としてきちんと機能している。
ここで一つの考えが浮かぶ。
これは
「12mmなのに低音が出る」
という話ではない。
平面IEMを“口径”で判断すること自体が、ズレているのではないか。
本記事では、この気づきを出発点に、
TRI KongTong I2の音作りを実体験ベースで掘り下げていく。
全体傾向 – 派手さより完成度を取った音
最初に全体像をまとめておくと、TRI KongTong I2の音は非常にバランス志向だ。
- 低域:量感と制動の両立
- 中域:凹ませない自然さ
- 高域:伸びるが刺激的ではない
どこか一帯域を誇張して「分かりやすく良く聴かせる」タイプではない。
その代わり、音楽をトータルで聴かせる完成度が高い。
低域 – 「平面=低音が出ない」を否定する鳴り方
TRI KongTong I2で最も印象的なのは、やはり低域だ。
12mm平面にもかかわらず、
- サブベースはきちんと沈む
- ミッドベースも痩せない
ただし、量感を盛って押し出すタイプではない。
下から支える低域で、音楽全体の重心を安定させている。
特に好印象なのは、低域の立ち上がりと収束。
ダイナミックドライバー的な余韻の長さではなく、
平面らしいスピード感を保ったまま量感を出している。
そのため、
- ベースラインが追いやすい
- リズムが間延びしない
- 低域が邪魔をしない
というメリットがある。
中域 – 平面IEMにありがちな“冷たさ”がない
中域は意図的に凹ませていない。
ボーカルは自然な距離感で定位し、過剰に前に出てくることもない。
平面IEMではありがちな
- 情報量は多いが感情が乗らない
- 分析的すぎて聴き疲れる
といった方向性には寄っていない。
TRI KongTong I2の中域は、
整理されているが無機質ではない。
声の輪郭が自然で、息遣いやニュアンスも拾いやすい。
「モニター的」と「リスニング的」のちょうど中間に位置する印象だ。
高域 – 伸びと穏やかさのバランス
高域は平面らしく解像感が高く、粒立ちも細かい。
ただし、無理に煌びやかさを狙っていない。
- 伸びは十分
- だが刺さらない
- シンバルも金属音が暴れない
結果として、長時間聴いても疲れにくい。
高域で主張しない分、
音楽全体のまとまりが非常に良い。
「高域が綺麗だから良い音」ではなく、
全帯域が噛み合った結果としての心地良さがある。
なぜ12mmでここまで低域が出るのか
ここからは設計面の話になるため、あくまで推測として書く。
口径より「実効ストローク」
平面ドライバーは、振動板が軽く張られすぎると
- 初速は速い
- だが低域で踏ん張れない
という状態に陥りやすい。
TRI KongTong I2は、12mmというサイズ以上に
実効ストロークを確保している印象がある。
単純に「大きい=低音が出る」ではない好例だ。
磁気回路の効率が高い
平面磁界型は、振動板全体を均一に駆動できてこそ意味がある。
TRI KongTong I2は、低域で音量だけが増える感じがなく、
制動がしっかり効いている。
磁気回路の効率が甘い平面IEMでは、
- 薄い低音
- 音圧だけが上がる
という症状が出やすいが、本機はそこに陥っていない。
チャンバー設計と背圧処理
平面IEMは背圧設計が非常にシビアだ。
- 逃がしすぎる → 低域が消える
- 詰めすぎる → 濁る
TRI KongTong I2は、そのバランスが非常に良い。
低域を殺さず、かつ膨らませない。
ここは完全に設計センスの差が出ている。
チューニング思想の違い
多くの平面IEMは
「解像度」「シャープさ」「中高域」
を最優先し、低域を切り捨てがちだ。
TRI KongTong I2は違う。
音楽全体として成立するバランスを重視している。
だから
平面らしいが、平面臭くない
という印象になる。
なぜ14mmでも低域が出ない平面IEMが多いのか
これははっきり言っておきたい。
平面IEMは口径が大きくても、低音が出るとは限らない。
14mm級でも
- ストローク不足
- 磁気回路の弱さ
- チャンバー設計の甘さ
があれば、低域は簡単に痩せる。
TRI KongTong I2は12mmでも、それらを成立させている。
だから
「意外に低音が出る」
ではなく、
「設計通りに低音が鳴っている」。
駆動・組み合わせについて
平面IEMらしく、ある程度の駆動力は必要。
スマホ直でも鳴るが、
DAPやUSB DACで電流が確保できると、
- 低域の制動
- 音場の安定感
が一段良くなる。
鳴らし切れた時の完成度は高い。
どんな人に向くか
- 平面IEMが好きだが、低域に物足りなさを感じていた人
- 解像度だけでなく、音楽性も欲しい人
- 長時間リスニング用途
- 「平面=分析用」という固定観念に飽きた人
逆に
- ドンシャリ至上主義
- 低域で殴られたい
という人には、少し穏やかに感じるかもしれない。
まとめ – 12mmで鳴らし切った平面IEM
TRI KongTong I2は、
平面IEMは口径じゃない
という事実を、理屈ではなく音で示してくる一台だ。
12mmという数字だけを見て判断すると、確実に見誤る。
これは
「12mmなのに」
ではなく、
「12mmで鳴らし切った平面IEM」。
派手さはない。
だが、設計とチューニングが噛み合った結果として、
非常に完成度が高い。
平面IEMに少しでも興味があるなら、
一度は触れておいて損はないと思う。


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