Shanling M3 Plus レビュー|エントリーDAPにAGLOを搭載した注目モデル

音楽

はじめに

Shanling が送り出したエントリーDAP「M3 Plus」。
エントリークラスながら、AGLO(Android Global Lossless Output)を搭載した注目モデルです。
価格を抑えつつもクアッドDACやパワフルなバランス出力を備え、ストリーミング世代に強く刺さる一台になっています。

今回は実際に触ってみて感じた操作感、音質、使い勝手を中心に、スペックも交えてレビューしていきます。


スペック詳細

DAC & アンプ構成

  • DAC:Cirrus Logic CS43198 ×4(クアッド構成)
    • ダイナミックレンジ 130dB
    • THD+N -115dB
    • 低ノイズ・低消費電力でポータブル用途に最適
  • アンプ:OPA1612+SGM8262 コンビ
    • OPA1612:高精度オーディオ用オペアンプで緻密な描写
    • SGM8262:低ノイズかつ高出力で駆動力を確保
  • 最大出力
    • バランス(4.4mm):800mW@32Ω
    • シングルエンド(3.5mm):200mW@32Ω

OS & ハードウェア

  • OS:Android 13
  • AGLO対応:どの音楽アプリからでもビットパーフェクト出力
  • SoC:Qualcomm Snapdragon 665
  • RAM/ROM:4GB / 64GB
  • 外部ストレージ:microSD 最大2TB対応

ディスプレイ & デザイン

  • ディスプレイ:4.7インチ IPS
  • サイズ:115 × 70.5 × 18 mm
  • 重量:205 g
  • 素材:アルミシャーシ+背面ガラス、持ちやすいエルゴノミックデザイン

バッテリー

  • 容量:4500mAh
  • 駆動時間:
    • SE出力:約13時間
    • バランス出力:約10時間
  • 充電:USB-C PD対応(急速充電可)

接続性

  • Bluetooth 5.0
    • 送信:LDAC / aptX HD / aptX / SBC
    • 受信:LDAC / SBC
  • Wi-Fi:2.4GHz / 5GHz
  • USB-DAC機能:PCに繋いでUSB-DACとして利用可能

実際の使用感

操作レスポンス

Snapdragon 665 はDAP用途なら十分な性能。ただし RAM が 4GB と少なめで、アプリ切り替えや検索操作では「ほんのりもっさり」する場面がある。
これは「エントリーDAPゆえの割り切り」で、ハイエンド機のようなキビキビ感を期待すると肩透かしだが、音楽再生自体には全く支障がない。


音質傾向(帯域ごと)

低域
量感は控えめでタイト。膨らむことなく制御が効いており、ベースやキックの輪郭が明確。
沈み込みも自然でスピード感があり、リズムの芯をしっかりと感じられる。
クラブ系の「腹に響く低音」を求める人には少し物足りないが、締まりの良さを重視する人には好印象。

中域
厚みと滑らかさがあり、ボーカルやアコースティック楽器を心地よく聴かせる。
男性ボーカルは芯が太く力強く、女性ボーカルは艶やかで柔らかい。
ギターやサックスの倍音も自然に響き、耳に刺さらない。まさに「ボーカル映えするDAP」。

高域
伸びやかで透明感があり、刺さることなく上品に抜けていく。
シンバルやバイオリンのアタックも適度な鋭さを持ちつつ、余韻がきれいに伸びる。
輝きは控えめで「澄んだ空気感」を足すタイプ。長時間聴いても疲れにくい。

音場と分離
音場は横方向に広がり、楽器の左右の定位がわかりやすい。
奥行きはやや控えめで、広大なホール感というよりコンパクトにまとまった印象。
分離はIEMで聴く分には十分。ただし情報量の多い速い曲では若干もたつきを感じ、ハイエンド機ほどの分離感はない。


音質傾向(ジャンル別)

ロック
ギターリフは力強く、ボーカルが自然に前に出るので相性は良い。
低域がタイトなのでリズムのキレが心地よい。
ただしハードロックやメタル寄りの高速リフでは分離感がやや追いつかず、全体が少し団子状になる場面もある。

メタル
ブラストビートや複雑なリフではもたつきを感じる。
音数の多い曲では情報量が処理しきれず、スピード感で上位機に劣る。
ただ、その緩さが逆に耳疲れを防ぎ、リスニング用途としては聴きやすい。

EDM / ヒップホップ
低域は輪郭がしっかりしていて、ビートの芯を感じられる。
クラブ系で欲しい「ドカンと腹に響く低音」ではなく、引き締まったベースラインを楽しむ方向。
シンセの高域は耳に刺さらず、夜通し聴いても疲れないチューニング。

ジャズ
抜群の相性。サックスやピアノの倍音は自然で、ベースラインもタイトに締まりリズムが追いやすい。
ドラムのブラシやシンバルの余韻も繊細に表現される。
小編成ジャズでは特に心地よく、ウォームさが楽曲に温かみを加える。

クラシック
弦楽器は艶やかで伸びがあり、ボーカル同様に自然な響き。
横方向の広がりはしっかりあるが、奥行きはやや物足りないため、大編成の交響曲ではスケール感に限界を感じる。
一方で室内楽や独奏曲では定位が明瞭で、楽器一つひとつの質感を丁寧に楽しめる。


AGLOとは?

AGLO(Android Global Lossless Output)は、Shanling独自の仕組みで、Android上の全ての音楽アプリからビットパーフェクト出力を可能にする。

通常のAndroid端末はOSレベルでリサンプリングがかかり、Apple Music や Qobuz といったロスレス配信サービスでも音質が劣化してしまう。
しかしM3 PlusはAGLOによってその制限を回避し、ストリーミングでもソースに忠実な音を楽しめる。

実際に聴き比べると──正直、想像以上に効果を感じた。
スマホ直挿しでは平面的だった曲が、M3 Plusでは立体的に広がり、解像感も増す。
低音はより深く、高域は透明感が増し、ボーカルも前に出てくる。

「ストリーミングでもここまで違うのか」と思わされる体験で、AGLOは単なる付加機能ではなく、M3 Plusを選ぶ決定的な理由になると実感した。

もちろん、ローカルに保存したハイレゾファイルをじっくり聴くDAPとしても十分に優秀だ。
けれど、このサイズと重量で Apple Music や Qobuz を気軽にビットパーフェクト再生できる というのは、日常的に持ち歩く機種として大きな魅力だ。


携帯性とバッテリー

205gという軽さは、DAPとしては持ち歩きやすい部類。
115 × 70.5 mm のコンパクトサイズで、ジーンズのポケットにも収まる。

バッテリーは 4500mAh を搭載し、シングルエンドで最大約13時間、バランスで最大約10時間の再生が可能。
実際の使用でも朝から外出して夜に帰るまで余裕で持ち、普段使いには十分なスタミナを備えている。
USB-C PDによる急速充電にも対応しているので、短時間である程度の充電ができるのも便利。

そこにAGLOによるビットパーフェクトストリーミング再生が加わることで、「外で気軽にストリーミングを楽しむDAP」 というポジションを確立している。
ローカルファイル専用機ではなく、日常使いで活きるDAPだ。


まとめ

Shanling M3 Plus は「エントリーDAP」として登場したが、AGLO対応・CS43198×4・OPA1612+SGM8262・800mW出力という強力な構成を持つ。

確かにRAMの少なさから操作のもっさり感や、速い曲でのわずかなもたつきはある。
しかし、その弱点を補って余りあるのが AGLOによるストリーミング音質の改善

「割り切りはあるけれど、結局AGLOがあるから許せる」──まさにそんな一台。
ローカル再生機としても優秀だが、むしろ ストリーミングDAPとして気軽に持ち運べる のが最大の魅力だ。
ストリーミング主体でDAPを試したい人にとって、M3 Plus は理想的な入門機になるだろう。

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