はじめに
Ultimate Ears TRIPLE.Fi 10(通称 TF10 / 10Pro)。
2007年頃に登場し、「イヤホンでここまで鳴るのか?」という体験を多くの人に叩き込んだ伝説的な3BAイヤホンだ。
Ultimate Ears Triple.fi 10 Pro は、
- タイプ:カナル型(耳栓型)、有線イヤホン
- ドライバー:バランスド・アーマチュア(BA)×3基(左右合計6基)
- インピーダンス:32Ω
- 音圧感度:117dB/mW
- 再生周波数帯域:10Hz〜17kHz
というスペックを持つ。
装着感は最悪、ケーブルは硬く、筐体は耳からはみ出す。
それでも “音がすべてを許した” という意味で、TF10は間違いなく名機だった。
そんなTF10を、先日たまたまイーイヤホンで中古A品として見つけてしまった。
あまりの懐かしさに、気づいたらそのままポチっていた。
(ケーブルなど付属品は結構欠品していた)
理性よりノスタルジーが勝った瞬間である。
あれから約20年。
現代のイヤホンやDAP環境を知ってしまった今、TF10はどう聴こえるのか?
今回は、FiiO M27という現代ハイエンドDAPを中心に、
さらに iBasso DX340 でも鳴らして比較しながら、
令和の基準でこの名機を再評価してみた。
使用した環境
今回の構成は以下の通り。
- イヤホン:Ultimate Ears TRIPLE.Fi 10
- ケーブル:NOBUNAGA Labs TR-UE2(3.5mm シングルエンド)
- イヤーピース:AZLA SednaEarfit MAX
- DAP:
- FiiO M27(High Gain)
- iBasso DX340(High Gain)
当時のiPodや付属ケーブルとは完全に別物の環境だ。
TF10の潜在能力を引き出す条件としては、これ以上ない。
装着感について:令和のイヤーピースで意外と快適
TRIPLE.Fi 10といえば「装着感が最悪」という評価があまりに有名だ。
確かに当時の付属イヤーピースでは、
- 形が合わない
- 密閉が安定しない
- 耳が痛くなる
という三重苦で、長時間の使用はかなり厳しかった。
しかし今回は AZLA SednaEarfit MAX を使用している。
このイヤーピースは変形しにくく、密閉性が安定し、ノズルをしっかり支えてくれるため、
TF10の大きな筐体と重さをうまく受け止めてくれる。
結果として、
当時ほどの装着ストレスは感じず、意外と普通に使えてしまった。
まず結論:思っていたより、ずっとイケる
最初に音を出した瞬間、こう思った。
「……あれ? 普通に良くない?」
これは懐かしさで甘く評価している感じではない。
今の耳で聴いても、音楽としてきちんと成立しているという意味だ。
帯域ごとに見ていこう。
低域:サブベースは浅いが、BAとしては異常に出る
TF10の低域は、いかにもBAらしい性格。
- サブベースの沈み込みや空気の揺れは浅い
- しかし中低域の量感とパンチはしっかりある
現代のDDやハイブリッド機と比べれば深さは及ばない。
それでもBAだけでこの押し出しの強さは今でも立派だ。
SednaEarfit MAXの密閉性とM27の駆動力のおかげで、
低域が痩せず、音楽の土台としてきちんと機能している。
中域:へこむどころか、ちゃんと前に出る
TF10はV字型と言われがちだが、
実際に聴くとボーカルは思ったより前に来る。
解像感とエッジがあるので、
- 声が埋もれない
- 音像が明確に立つ
“聞き取りやすくて存在感のある中域”は今でも十分通用する。
高域:キラキラではなくギラギラ
高域はまさにTF10らしい音。
- 滑らかではない
- だが勢いと輝きがある
現代のマイルドなチューニングに慣れていると少し荒く感じるが、
このギラつきが音場の広がりと抜けを作っている。
M27の制動が効いていることで、
高域がバラけず、うるさくなりすぎないのも大きい。
音場と解像感:20年前のBA機とは思えない
最大の驚きはここだ。
- 横方向に広い音場
- BAらしいスパッとした定位
- 楽器の分離も今でも十分
最近の解像度重視イヤホンには及ばないが、
音楽を楽しむ上で不足を感じるレベルではない。
むしろ、今の優等生的なチューニングにはない
音の勢いと開放感がある。
DX340とM27での違い
同じTF10でも、DAPを変えるとキャラクターがはっきり変わる。
iBasso DX340
- 音像が整理される
- 分離と透明感が高い
- だがTF10では少し大人しすぎる
TF10の持つ
ギラっとした高域と中低域のエネルギーが、
DX340では少し抑え込まれる印象だった。
一方 FiiO M27 は、
- ドライブ感が強い
- 音の立ち上がりが速い
- 押し出しと勢いがある
その結果、
TF10の荒削りな魅力とライブ感がそのまま前に出てくる。
整理されたDX340、
元気で楽しいM27。
TF10には明らかにM27の方が相性が良い。
なぜ今でも通用するのか?
TRIPLE.Fi 10は単なる“昔の高級イヤホン”ではない。
当時としては異例の
- 3BA構成
- 広い音場設計
- 派手で分かりやすいチューニング
これがイヤホンの体験値を一段引き上げた。
さらに今回は、
- TR-UE2の情報量と厚み
- SednaEarfit MAXの密閉と低域
- FiiO M27の圧倒的な駆動力
この組み合わせで、
TF10が本来持っていたポテンシャルを引き出している。
もちろん限界もある
正直に言えば、
- サブベースの深さ
- 中域の肉感
- 高域の滑らかさ
このあたりは、
現代のハイエンドIEMには及ばない。
だがそれは
TF10が劣っているのではなく、時代が進んだだけだ。
まとめ:TRIPLE.Fi 10は本当に名機だった
あらためて確信した。
TRIPLE.Fi 10は、思い出補正ではなく、
音として今でも成立する本物の名機だった。
令和のハイエンドDAPで聴いても、
「うん、普通にいい音だな」と思える。
それがどれほど異常なことか。
装着感はクセが強い。
ケーブルも時代遅れ。
それでも音がすべてを許す。
20年前にこのイヤホンでイヤホンにハマった人たちは、
ちゃんと“本物”を聴かされていた。
そう思わせてくれる再会だった。


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