はじめに
DAPのレビューでは、
「解像度が高い」「音場が広い」「駆動力がある」
といった言葉が並びがちだ。
だが、ある価格帯・性能帯を超えると、
それらの言葉はほとんど差別化にならない。
その先で問われるのは、
そのDAPの音を“基準として信じられるかどうか”。
今回レビューする
FiiO M27 Titanium Alloy
は、まさにその問いに正面から答えてくるDAPだ。
結論を先に書くと、
これは「感動を盛るDAP」ではない。
正確で、破綻せず、長時間付き合える音を淡々と出すDAPである。
なぜFiiO M27を選んだのか
現在メインで使用しているDAPは iBasso DX340。
音の方向性、完成度、携帯性のバランスが良く、
いわゆる「基準機」として非常に優秀な一台だ。
その上でM27 Titanium Alloyを導入した理由は明確で、
- 音の基準をもう一段はっきりさせたかった
- 電源設計と駆動力に余裕のあるDAPを使ってみたかった
- DX340と「どこが同じで、どこが違うのか」を冷静に確認したかった
というもの。
派手さや劇的なキャラ違いを期待していたわけではない。
違いが小さいことも含めて把握したかった、というのが正直な動機だ。
第一印象:上品でモニターチック
最初に音を出した瞬間の印象は、かなり分かりやすい。
- 音が整っている
- 帯域ごとの主張がない
- 余計な色付けをしない
いわゆる上品でモニターチックな音。
ただし、冷たいわけではない。
立ち上がりは速く、減衰も引きずらない。
スピード感はかなり良い。
「聴かせる音」ではなく、
「正しく出ている音」という印象が終始一貫している。
DX340との比較:基本の音はかなり近い
正直に書く。
M27 Titanium AlloyとDX340は、キャラクターが大きく違うDAPではない。
どちらも
- 解像度が高い
- 制動が強い
- 変な味付けをしない
いわゆる「現代的ハイエンドDAPの王道」だ。
そのため、
一聴して「全然違う」と感じるタイプの比較ではない。
それでも出る差は「温度感」
違いをあえて言語化するなら、ここ。
- DX340:
中低域にほんの少しだけ温度感がある - M27 Titanium Alloy:
温度を演出しない、よりニュートラル
差はかなり小さい。
誇張しなければ分からないレベルだ。
だが、このわずかな温度差は、
長時間リスニングでは確実に効いてくる。
「どちらが良いか」ではなく、
「どちらを基準にしたいか」の違いだ。
Final A8000での検証
DAPの素性を見るため、Final A8000で聴き比べを行った。
結論ははっきりしている。
M27 Titanium Alloy × A8000、全然いける。
- スピード感がしっかり出る
- 高域が変に硬くならない
- 長時間聴いても神経がすり減らない
モニター寄りのDAPを合わせると
A8000は簡単にピーキーになるが、
M27 Titanium Alloyはそこまで追い込まない。
冷静だが、音楽を壊さない。
このバランスは評価が高い。
ゲイン設定:ウルトラゲインは完全にオーバースペック
M27 Titanium Alloyのゲイン切り替えは、
単なる音量調整ではない。
ウルトラゲインにすると、
駆動力と制動力が明らかに一段階上がる。
ただし、結論は明確だ。
普通のIEMでは、このパワーは必要ない。
Final A8000クラスでもHigh Gainで十分。
ウルトラゲインは、
- 感度が低いIEM
- 明確に駆動不足を感じる場合
に限定して使うのが現実的だ。
チタン合金(Titanium Alloy)筐体についての考察
「音が変わる」のか?──断定はしない
ここは重要なので最初に明記する。
アルミ筐体版は未試聴であり、
筐体素材による音の差を断定的に語ることはしない。
以下は、
- Titanium Alloy筐体モデルを実際に使った印象
- 素材の物性
- 他レビューで語られている傾向
を整理した考察である。
Titanium Alloyという素材の性質
チタン合金はオーディオ用途として見ると、かなりストイックな素材だ。
- 剛性が高い
- 不要な共振が出にくい
- 音を「鳴らす」方向には働かない
つまり、
音を積極的に演出しない素材。
Titanium Alloy筐体モデルで感じる傾向
M27 Titanium Alloyを使って感じるのは、
- 音像が安定している
- 輪郭が揺れにくい
- 余韻が整理されている
という点。
「チタン合金だから音が良い」というより、
筐体が音に余計なことをしないため、
回路設計の性格がそのまま出ている
という印象が近い。
アルミ筐体版について
他のレビューでは、
アルミ筐体版の方が若干ウォームに感じる
という意見も見られる。
ただしこれは、
試聴環境や比較対象による影響が大きく、
ここでは
そう感じる人もいる
という情報として扱うに留めたい。
結論
少なくともM27 Titanium Alloyについて言えるのは、
音を変える素材ではなく、
設計思想を歪めない素材
ということ。
M27の
- 上品さ
- 整然さ
- モニター的な正確さ
を好ましいと感じる人にとって、
納得感の高い選択肢だ。
サイズと携帯性
ここは正直に書く。
- 重さ:重いが許容範囲
- サイズ:明確に大きい
M27 Titanium AlloyはポケットDAPではない。
バッグ前提で、腰を据えて聴くDAPだ。
携帯性よりも、
- 電源余裕
- 音の安定感
を優先した設計だと感じる。
どんな人に向くDAPか
FiiO M27 Titanium Alloyは、次のような人に向いている。
- 音を盛らないDAPが好き
- IEMや音源の違いを正確に把握したい
- 長時間聴いても破綻しない音を求めている
- 「基準機」を置きたい
逆に、
- 一聴して分かる派手さ
- 分かりやすい感動
を求める人には向かない。
結論:外に持ち出せる「信用できる基準」
FiiO M27 Titanium Alloyは、
- 地味
- 派手さはない
- だが非常に誠実
そんなDAPだ。
DX340と比べても、
劇的なキャラクター差はない。
だが、より冷静で、よりニュートラル。
「今日はこの音を信じる」
そう思わせてくれるDAPは、実は多くない。
FiiO M27 Titanium Alloyは、
音を楽しむためのDAPというより、
音を判断するためのDAP。
その価値が分かる人には、
確実に刺さる一台だ。



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