はじめに
AFUL のハイブリッド機は、独自の音響チューブ構造による“タイトで情報量の多いサウンド”が特徴だ。
今回の Performer 8 は、その方向性をより先鋭化させた 1DD+7BA の上位モデル。低域は量感をしっかり出しつつも膨らまず、高域は鋭いエッジを伴って細部を描き切る。
一方で、シンバルの倍音が強調されるなど、隠れたクセもある。
良いところも弱点も含めて、“リアルにどう聴こえるのか” を中心にまとめていく。
試聴環境
- DAP:iBasso DX340(4.4mmバランス)
- 音源:Apple Music(ロスレス)
- イヤーピース:純正(付属品)
音の骨格
Performer 8 の音は “情報量重視のタイト系”。
低域は量があるのに膨らまず、スピード感が強い。
中域は前寄りで明瞭。
高域はエッジが立ちやすく、曲によっては刺激が出る。
スペック
- 1DD+7BA ハイブリッド
- インピーダンス:30Ω
- 感度:115dB
- 再生周波数帯域:5Hz–40kHz
- RLC ネットワーク+ロング音響チューブ構造
- OFC 銀メッキケーブル(2Pin)
帯域ごとの詳細レビュー
低域
サブベースは深く沈み、量も十分。
それでいて膨らまず、タイトで制動力のある低域にまとまっている。
キックの立ち上がりが速く、尾引きが少ない。
ロックやメタルなど、スピード感のある楽曲で特に相性が良い。
中域
ボーカルは前寄りで明瞭。
ギターやシンセ、ベースが混ざらず、分離が良い。
BA 特有の乾きすぎた質感はなく、適度に密度がある。
歌モノ全般との相性は安定している。
高域
最も個性が出る帯域。
8〜10kHz に細いピークがあり、クラッシュシンバルの倍音と重なると刺激が出やすい。
情報量そのものは多く、細部の描写力も高い。
ただし自然な伸びというより、“BA 的な鋭さ” が前に出る高域。
ハイハットは問題ないことが多いが、クラッシュだけ硬さが目立つ場面がある。
解像度・分離・音場
- 解像度:高い
- 分離:良好
- 音場:横方向は広め、奥行きは標準的
定位が正確で、混雑した曲でも破綻しない。
派手ではないが、整理された“理性的な”空間表現。
音のキャラクター(温度感・質感)
- 温度感:クール寄り
- 質感:透明感のあるクリア系
- 傾向:
- タイト
- 速い
- エッジの立つアタック
温かみよりも明瞭さやスピードを重視するサウンド。
長時間使用で見えたこと
聴き込むほどに、
低域の量とタイトさの両立 がこの機種の魅力としてはっきりしてくる。
一方で高域のピークによる刺激は、曲ごとに一貫して出る傾向がある。
このキャラクターをどう捉えるかで評価は分かれやすい。
弱点・注意点
- クラッシュシンバルが硬く出やすい
- 8〜9kHz の刺激が曲によって気になる
- 解像度が高く、音源の粗を拾いやすい
結論
AFUL Performer 8 は、
「タイトで量のある低域」「明瞭な中域」「鋭く情報量の多い高域」
を中心にした、解像度重視のハイブリッド。
ジャンルとの相性は明確で、
ロック・メタル・アニソン・打ち込み系では長所が素直に出る。
高域のキャラクターをどう受け止めるかが、最終的な評価を決めるポイントになる。



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