はじめに
TRNの「SHELL」は、
3基のダイナミックドライバーと1基の平面ドライバーによるハイブリッド構成を採用したIEMだ。
構成自体はスペック表を見る限り派手だが、本機の方向性は決して「構成ありき」ではない。
SHELLは、
- 帯域ごとの役割分担
- 音のつながり
- 長時間リスニングでの安定感
といった、完成品としてのまとまりに強く重きを置いた音作りをしている。
本記事では、他機種との比較や構成論に寄りかからず、
「3DD+1プラナーのイヤホンとして、実際にどう鳴るのか、どう使えるのか」
という一点に集中してレビューしていく。
試聴環境
- DAP:iBasso DX340
- イヤーピース:AZLA SednaEarfit MAX
- ノズル:Reference
- ケーブル:付属品(4.4mmバランス)
音質レビュー
低域
量感と制動のバランスが取れた、実用的な低域
SHELLの低域は、第一印象として「しっかり出ている」。
サブベースまで沈み込み、量感も不足はない。
ただし、その鳴り方は非常に落ち着いている。
- ミッドベースが過剰に膨らまない
- 低域の余韻が長引かない
- アタックと収束が自然
結果として、低域は音楽の土台として機能している。
前に出て主張するタイプではなく、全体を下から安定させる役割に徹している印象だ。
ロックやエレクトロでも物足りなさは感じない一方、
ジャズやボーカルものでも邪魔にならない。
このバランス感覚は、意図的なチューニングの結果だろう。
中域
主役としてきちんと存在する、安心感のある中域
中域はSHELLの大きな強みのひとつ。
- 明確にへこまない
- 前に出すぎない
- しかし埋もれない
ボーカルは自然な距離感で定位し、
声の厚みや息遣いも過不足なく描写される。
ウォーム寄りではあるが、
- 輪郭が甘くならない
- 情報量が削がれない
点が好印象だ。
「派手さはないが、ずっと聴いていられる中域」。
この表現が一番近い。
高域
刺激を抑え、質感と伸びを優先した高域表現
高域は刺さりを強く抑えたチューニング。
- 不自然なピーク感がない
- 金物がキンキンしない
- 音が細くならない
一方で、曇った印象もなく、
余韻は上方向へ素直に伸びていく。
平面ドライバー由来と思われる(※推測)
滑らかな減衰と整った質感があり、
高域で解像感を誇張するタイプではない。
結果として、
長時間聴いても神経を使わない高域に仕上がっている。
全体の音の方向性
SHELLの音作りを一言でまとめるなら、
「完成度優先のバランス型」
- ややウォーム寄り
- 特定帯域を誇張しない
- 全体のつながりを重視
構成の情報量に対して、音は非常に大人しい。
だがそれは「地味」ではなく、
破綻のない音楽再生を目指した結果と感じられる。
音場・定位
音場は横方向にやや広め。
- 音が横に自然に展開する
- 縦方向の誇張は控えめ
立体的に包み込むタイプではなく、
整理されたステージに音像が並ぶ感覚だ。
近〜中距離での定位が安定しており、
楽器の位置関係が把握しやすい。
付属品・ビルドクオリティ
SHELLは、付属品の内容も含めて評価すべき製品だ。
ケース
付属するのは、ペリカンケース風のハードケース。
- 剛性が高く安心感がある
- デザインも無骨で格好いい
- 持ち運び用途として実用的
価格帯を考えると、かなり贅沢な付属品だ。
ケーブル
付属ケーブルは4.4mmバランス対応。(3.5mmと交換式)
- 作りがしっかりしている
- 取り回しが良い
- 音質的にも不足を感じない
「まずはこのまま使って問題ない」と思わせる品質で、
初期投資を抑えられる点も好印象。
イヤーピース・ノズル
- イヤーピースは複数種類付属
- ノズル交換に対応
フィッティングや音の微調整が可能で、
ユーザー側で追い込みやすい設計になっている。
まとめ
TRN SHELLは、
3DD+1プラナー構成のハイブリッドIEMとして、音・付属品・使い勝手のバランスが非常に高い水準でまとまっている。
低域は量感と制動のバランスが良く、
中域はへこまず自然に主役を張り、
高域は刺さらず滑らかに伸びる。
どこか一帯域だけを強調するのではなく、音楽を通して聴いたときの破綻のなさが際立つ。
さらに評価すべきは、付属品を含めた製品としての完成度だ。
- ペリカンケース風のハードケース
- そのまま使える品質の4.4mmバランスケーブル(3.5mmと交換式)
- 複数種類のイヤーピース
- ノズル交換による音の微調整機構
これらがすべて同梱されている。
そして重要なのは価格。
Amazonで8,000円台で購入できるイヤホンとして見ると、コストパフォーマンスは相当に高い。
音質だけでなく、
「買ってすぐ不満なく使える」
「追加投資を強いられない」
という点まで含めて考えると、この価格帯では明確に上位に入る完成度だ。
派手な解像感や刺激的な音を求める人向けではないが、
- バランスの良さ
- 聴きやすさ
- 長時間使用での安定感
- 付属品まで含めた満足度
を重視するなら、価格以上の価値を感じやすい1本。
8千円台で「ちゃんと作られたハイブリッドIEM」を探しているなら、
TRN SHELLはかなり有力な選択肢だ。



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