はじめに
AFULのIEMラインナップの中でも、完成度の高さとバランスの良さで評価されてきた
AFUL Performer 8(以下 P8)。
そのP8をベースに、ドライバー構成や低域構造を見直し、
より音楽的な方向へ進化させたモデルが
AFUL Performer 8S(以下 P8S)だ。
正直に言えば、購入前は
「P8があれだけ完成しているのに、どれほど音が変わるんだろう?」
という半信半疑な気持ちもあった。
だが実際に聴いてみると、P8Sは
P8とははっきり違うと分かる変化があり、
しかもその方向性がかなり自分の好みに合っていた。
結論から言うと、P8Sは
P8からの買い換えではなく、買い増しを強く推奨したいイヤホンだ。
試聴環境
本レビューは、以下の環境での試聴を前提としている。
- イヤホン:AFUL Performer 8S(P8S)
- ベント:Closed
- イヤーピース:付属(白+オレンジ軸)
- ケーブル:付属 4.4mm
- DAP:FiiO M27
- ソース:Apple Music(ロスレス)
Closedベント前提、付属アクセサリー中心の構成ではあるが、
P8Sのキャラクターを把握するには十分な環境だと感じている。
スペック比較(P8S / P8)
| 項目 | P8S | P8 |
|---|---|---|
| ドライバー構成 | 1DD + 6BA + 1PR + 1MP | 1DD + 7BA |
| インピーダンス | 26Ω ±20% | 25Ω |
| 感度 | 108 dB @ 1 kHz | 115 dB @ 1 kHz |
| 周波数特性 | 10 Hz – 35 kHz | 5 Hz – 35 kHz |
| チューニング調整 | ベント切替(Open / Closed) | 固定 |
| ケーブル芯数 | 6芯 | 4芯 |
| 端子 | 2Pin(0.78mm) | 2Pin(0.78mm) |
| ケーブル長 | 1.2m | 1.2m |
| プラグ | 3.5mm / 4.4mm | 3.5mm / 4.4mm |
鳴らしやすさについて
感度は数値上P8Sの方が低いが、実際の試聴では鳴らしにくさを感じることはなく、
P8と体感上の駆動難易度に大きな差はない。
むしろ低域の量感や音圧感がしっかり出る分、
P8Sの方が「余裕を持って鳴っている」と感じる場面もある。
全体の印象
P8Sのサウンドを端的に表すなら、次の一文に集約できる。
サウンドバランスは弱ドンシャリで明確。
いっぽう音色は中庸寄りで、温度感は若干ウォーム。
低域と高域がしっかり主張するドンシャリ系の配分だが、
刺激的・派手といった方向ではなく、音色そのものは整っていて自然。
中低域の厚みや倍音の出方が効いており、
全体としてはわずかにウォーム寄りの質感にまとまっている。
P8と比べると、
- 低域は量感と深みが増し
- 高域は角が取れてスムースになり
- 全体として余裕と音楽的なまとまりが加わった
そんな印象を受ける。
音場は横方向に広めで見通しが良い。
縦方向(奥行き)は標準的で、
過剰な空間演出をしない現実的な音場設計だ。
低域:量感と弾力が加わり、「楽しい低音」へ
P8Sで最も分かりやすい進化点は低域だ。
P8の低音は
- タイト
- 締まり重視
- パンチのある鳴り
という、骨太で勢いのあるタイプだった。
それに対してP8S(Closedモード)の低域は、
- しっかり沈み込む
- 量感が明確に増している
- 弾力があり、リズムが楽しい
という方向へシフトしている。
一瞬「少しゆったり?」と感じる場面もあるが、
それはレスポンスが鈍いのではなく、
低域に余裕と厚みが加わった結果だ。
ドラムのキックやベースラインは前に出てきて、
弾むような質感で鳴る。
中域:ボーカルはP8譲り、楽器の存在感が向上
中域のキャラクターはP8とかなり近い。
- ボーカルはしっかり前に出る
- 芯があり、距離感も似ている
P8が好きだった人なら違和感はほぼないはずだ。
一方でP8Sでは、
ギターやシンセ、歪み系の音の輪郭やレイヤリングがより明確。
中低域に厚みが加わったことで、
音像が痩せず、温度感を保ったまま解像度が上がっているのが印象的だ。
高域:シャリ感を抑え、自然で上品な伸びへ
高域はP8からの方向転換がはっきり分かるポイントだ。
P8は
- シャリ付き
- エッジの立った輝き
が印象的だったのに対し、P8Sは
- スムース
- 綺麗
- 自然に伸びる
という方向へシフトしている。
刺さりや過度な強調が抑えられ、
中低域の厚みと相まって、
結果的にややウォーム寄りで聴き疲れしにくい高域になっている。
筐体と装着感:わずかに大型化、快適さは健在
筐体はP8よりわずかに大きくなった印象がある。
Passive Radiator追加による内部容積増加の影響だと思われる。
ただし装着感はP8と変わらず良好。
AFULの3D耳データ設計は相変わらず優秀で、
長時間装着しても圧迫感や違和感はほとんどない。
P8とP8Sの関係性:買い換えではなく、買い増し
P8とP8Sを聴き比べて強く感じたのは、
P8を否定しない、正しい進化
という点だ。
- P8:タイトで骨太、勢いのあるサウンド
- P8S:低域の楽しさと高域の自然さを加えた音楽的な万能型
方向性が異なるため、
どちらかを手放す理由がない。
だからこそ結論は明確で、
AFUL Performer 8S(P8S)は、買い換えより買い増し推奨
まとめ
P8Sは、
- 低域の深みと楽しさ
- 中域の厚みと見通し
- 高域の自然さと聴きやすさ
を確実に積み上げた、P8の正統進化モデル。
弱ドンシャリなサウンドバランスを持ちながら、
音色は中庸寄りで、わずかにウォームな質感にまとまっている。
P8が好きだった人にとって、P8Sは
違いが分かり、しかも好みの方向だったと実感できる進化だ。
このClosed固定運用で、
長く付き合えるイヤホンになりそうである。


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