TRI I3 MK3 レビュー|中域を核に据えたトライブリッドの実像

音楽

はじめに

TRI I3 MK3 は、トライブリッド構成という言葉から想像されがちな「派手さ」や「分かりやすい刺激」とは、少し距離を置いたイヤホンだ。低域・中域・高域それぞれに異なるドライバーを割り当てながらも、音作りの主眼はあくまで中域、とりわけボーカル表現に置かれている。

本記事では、I3 MK3 の音の骨格や帯域ごとの特徴、そして実際に使って見えてきたキャラクターを淡々と書き出していく。派手な評価軸ではなく、「どういう音の方向性を持ったイヤホンなのか」を明確にすることを目的とする。


試聴環境

  • DAP:FiiO M27 / iBasso DX340
  • ケーブル:付属ケーブル
  • イヤーピース:付属イヤーピース
  • 再生ジャンル:J-POP、女性ボーカル、ロック、EDM

いずれも駆動力と制動力に余裕のあるDAPを使用し、イヤホン本来の音作りを確認することを重視した。アクセサリーによる音の変化は極力排し、メーカー想定に近い構成で試聴している。


音の骨格

I3 MK3 の音の骨格は非常に分かりやすい。低域と高域が主張しすぎず、その分中域が自然と前に出る構成だ。

音全体は抑制的で、音量を上げても破綻しにくい。刺激よりも情報量と安定感を優先したチューニングで、第一印象で強く印象づけるタイプではないが、楽曲全体を通して聴くとバランスの良さが浮かび上がってくる。


スペック

  • ドライバー構成:10mm ベリリウムコーティングDD(低域) + Sonion 2356 BA(中域) + 10mm 平面磁界ドライバー(高域)
  • インピーダンス:21Ω
  • 感度:104dB
  • 周波数特性:20Hz – 20kHz

数値上は比較的鳴らしやすい部類に入るが、ドライバー構成の特性上、ある程度制動力のあるDAPやアンプと組み合わせた方が全体のバランスを掴みやすい。


帯域ごとの詳細レビュー

低域

低域は量感として十分だが、誇張はされていない。サブベースはしっかり沈み、必要な場面では存在感を示すが、常に前に出続けるタイプではない。

中低域が過度に膨らまないため、ボーカルや中域の情報を邪魔しない。ドンシャリ的な迫力を期待すると物足りなさを感じる可能性はあるが、全体の安定感という点では好印象だ。


中域

I3 MK3 の核となる帯域。ボーカルの定位は近く、口元の輪郭が明瞭に描かれる。

BAドライバーらしい解像度の高さに加え、量感と密度が確保されており、線の細さを感じさせない中域表現が特徴的だ。特に女性ボーカルでは、声の立ち上がりやニュアンスが分かりやすく、楽曲の主役として自然に前に配置される。


高域

高域は十分に伸びているが、キラキラとした煌めきを前面に押し出す方向性ではない。音数は多く、情報量も不足しないが、刺激感は抑えられている。

平面磁界ドライバーらしく、フラットで落ち着いた質感の高域で、長時間聴いても疲れにくい反面、派手さを求める人には地味に映るだろう。


解像度・分離・音場

解像度は高く、細かな音の重なりも把握しやすい。分離感は良好で、各パートが団子になることは少ない。

音場は横方向に自然に広がり、定位も安定している。極端に広大というわけではないが、楽曲の構造を把握するには十分な広さを持っている。


音のキャラクター(温度感・質感)

全体の温度感はクール寄りというより、わずかにウォーム寄りと表現した方が実態に近い。低域と中域にしっかりと量感と厚みがあり、音色自体は冷たくなりすぎない。

中域の密度が高いため、ボーカルや楽器の胴鳴りには温かみが感じられる一方で、過度に甘くなったり、緩んだりすることはない。質感としては、ウォーム方向に軽く振れたニュートラルといった印象だ。

金属的な硬さや過剰な艶感は抑えられており、音のエッジは丸められている。その結果、刺激感は少なく、落ち着いたトーンで音楽を聴き続けられる鳴り方になっている。


長時間使用で見えたこと

派手さがない分、長時間のリスニングでも疲労感が少ない。音量を上げても刺激が出にくく、作業用BGMから集中して聴くリスニングまで幅広く対応できる。

一方で、短時間の試聴では魅力が伝わりにくく、じっくり聴くことで評価が定まるタイプのイヤホンでもある。


弱点・注意点

  • ドンシャリや派手な音作りを求める人には向かない
  • 高域の煌めきや音圧重視の人には物足りない可能性がある
  • 第一印象でのインパクトは控えめ

方向性が明確な分、好みとの相性ははっきり分かれる。


初代 I3 / I3 Pro / I3 MK3 の位置づけ

同じ I3 系列でも、各世代でチューニングの方向性はかなり異なる。ここでは簡単にキャラクターの違いを整理しておきたい。

初代 TRI I3

シリーズの中で最もエネルギッシュでエキサイティング。V字寄りでアグレッシブなチューニングが特徴だ。

  • ベースはパンチがあり、楽しく前に出る
  • 高域は明るくスパークリーでフラッシー
  • 音場は広く、解像度も高い

一方で、曲や音量次第ではハーシュに感じたり、疲れやすいと感じる人もいたようだ。プラナー型ドライバーの初期的な魅力がストレートに表現された、「派手でワクワクする」サウンドと言える。


TRI I3 Pro

初代の派手さをやや抑えつつ、低域の量感と中域の滑らかさを強化したモデル。

  • 低域は量感が増し、ベースラインが魅力的
  • 中域はスムーズで暖かい方向
  • 全体としては初代よりコヒーレント

ただしレビューによっては、中域がやや引っ込み、空洞感を覚えるという声も見られた。音楽的で聴きやすくなった一方、エネルギッシュさはまだ強く残っている。


TRI I3 MK3

シリーズの中で最も成熟したチューニング。

  • 初代の音場と解像度
  • Pro の低域と中域の魅力

これらを引き継ぎつつ、高域はプラナーらしさを残したまま、エレクトロスタティック的とも言える滑らかさに仕上げられている。

ベースは量感こそ十分だがブースト感はなく、非常にクリーンで制御が効いている。高域はしっかり伸びるものの、キラキラ感は抑えられており、長時間聴いても疲れにくい。

派手さはシリーズ中で最も控えめだが、その分ナチュラルでバランスが良く、「大人しくても自然で、長く付き合える音」という評価がしっくりくる。


まとめ

TRI I3 MK3 は、I3 シリーズの中で最も派手さを抑え、音楽を安定して聴かせる方向へと進化したモデルだ。

初代 I3 のエネルギッシュでフラッシーな魅力や、I3 Pro の低域と中域の楽しさを踏まえつつ、MK3 ではそれらを一度整理し直し、中域を核に据えたニュートラル寄り・わずかにウォームなバランスへと着地している。

低域は量感こそ十分だが、あくまで制御重視でブースト感はない。高域も同様に、しっかりと伸びながらキラキラ感を抑え、刺激よりも聴きやすさを優先している。その結果、短時間の試聴では地味に感じられる一方、長時間聴くほどに安定感と完成度が際立つ音作りになっている。

I3 MK3 は、シリーズの中で最も「大人しい」存在かもしれない。しかしそれは後退ではなく、派手さを削ぎ落とした先にある成熟だ。音を誇張せず、楽曲そのものと向き合いたい人にとって、このイヤホンは長く付き合える相棒になり得る。

初代 I3 のワクワク感を求める人には合わない可能性がある一方で、ドンシャリに疲れ、自然でバランスの取れた音を求めるようになったリスナーには、I3 シリーズの中でもっとも納得感の高い選択肢だろう。

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