はじめに
GitHub Copilot だけで満足できた時代はもう終わった。
2025年秋、AI 開発ツールはまさに群雄割拠のフェーズに突入している。
中でも注目を集めるのが Cursor、Windsurf、Continue の3つだ。
いずれも「AIでコーディングを効率化する」という目的は同じだが、成り立ちや思想、強みは驚くほど異なる。本記事では調査結果をもとに、それぞれのツールの特徴を厚めに解説しつつ、開発シーンやコスト、向き不向きまで整理する。
3つのAI開発ツールの立ち位置
Cursor – 安定の本命
Cursor は 2023 年に登場した VSCode フォークの AI 開発環境。最大の特徴は「既存の VSCode から違和感なく移行できる」ことだ。インターフェースはほぼ同じで、既存の拡張機能もそのまま使えるため、導入時の学習コストは限りなくゼロに近い。
特に人気なのは Cmd+K によるインライン編集。コードを範囲選択して指示を与えると、差分を表示しながらリファクタリングや修正を提案してくれる。レビューも容易で、実務にすぐ適用できる完成度がある。
さらに OpenAI や Anthropic の最新モデルを幅広くサポートしており、エンタープライズ利用でも安心。月額 $20 は個人には高めに感じるが、効率向上による工数削減で十分回収できる価格設定だ。
Windsurf – 新興の挑戦者
Windsurf は 2024 年末に登場した比較的新しいプレイヤー。最大の特徴は Cascade モード で、これは単なるコード生成にとどまらず、関連する複数ファイルを横断的に修正・生成してくれる仕組みだ。IDE 全体を AI が「操縦している」かのような体験は、従来のエディタにはなかったものだ。
VSCode 拡張としても利用可能だが、独自エディタ版が中心で、互換性はまだ発展途上。挙動が「やりすぎる」ケースやバグ報告も少なくない。ただし開発スピードは速く、無料プランでも十分試せる。Proプランも月 $10 と比較的安価で、最新体験を手軽に導入できるのが魅力だ。半年後には Cursor と並ぶ存在になっているかもしれない。
Continue – OSSの自由人
Continue は 2023 年リリースのオープンソース拡張。VSCode / JetBrains 双方に対応し、最大の特徴は OSS で完全無料 であることだ。開発コミュニティ主体で進化を続けており、ユーザーは自分で自由に改造・改善に参加できる。
モデル接続の自由度が非常に高く、OpenAI や Anthropic などのクラウド API だけでなく、Ollama のようなローカル LLM にも対応可能。プライバシーを重視するプロジェクトやオフライン環境での開発に最適だ。
ただし UI は素朴で、設定も手間がかかる。サポートはコミュニティ頼みで、即戦力性は Cursor や Windsurf に劣る。だが「自分で環境を作り込む」ことを楽しめるエンジニアには唯一無二の選択肢となる。
開発シーンごとの使い心地
Reactコンポーネントの生成
Cursor
Cmd+K でインライン編集しながら即座にコンポーネントを生成。プレビューも同時表示され、直感的かつスピーディ。
Windsurf
Cmd+I → Cascadeモードが新規ファイルを自動生成し、import 文も追加。便利だが時に「余計なお世話」な修正が入り込む。
Continue
モデルを選んで指示 → コード生成 → 手動コピペ。柔軟性はあるが、ひと手間増える点は煩雑。
既存コードのリファクタリング
Cursor
範囲選択して Cmd+K → 差分表示で修正。小規模リファクタリングや部分修正に最適。
Windsurf
Cascadeモードが複数ファイルをまたいで自動修正。大規模リファクタに強いが、意図しない改変リスクがある。
Continue
選択範囲に柔軟対応。モデルを切り替えながら試せるが、微調整は最終的に手作業が必要。
バグ修正
Cursor
エラーメッセージをコピーして Cmd+Shift+L でチャット → Cmd+K で修正。ワークフローが確立されていて安心。
Windsurf
エラーを Cascade に投げると関連ファイルを自動検索・修正提案。賢いがブラックボックス感が強い。
Continue
エラー箇所を選択して “fix this error”。複数案を提示してくれるが、選択肢が多すぎて判断に迷うことも。
強みと弱みの整理
Cursor
- 強み:VSCode互換で導入容易/UI完成度が高い/情報量が豊富
- 弱み:月額$20は高め/革新性は控えめ/レスポンス遅延が発生することも
Windsurf
- 強み:Cascadeモードによる自動化/無料でも十分試せる/軽快な動作感
- 弱み:不安定さが残る/日本語情報が少ない/挙動が過剰になる場合あり
Continue
- 強み:完全無料/モデル選択自由/OSSによる透明性とローカル利用の柔軟さ
- 弱み:設定が複雑/UIが素朴/自動化機能は少ない/サポートはコミュニティ頼み
課金とBYOK(Bring Your Own Key)
AI 開発ツールのコスト構造は「ツール利用料」と「モデル利用料」に分かれる。
Cursor
- Proプラン($20/月)でモデル利用料込み。
- BYOK対応で、自分の OpenAI API / Anthropic API キーを設定できる。
- ただし Max モードなど独自機能は有料プラン契約が前提。
Windsurf
- 無料プランあり。
- Proプラン(月額 $10)で制限解除+Cascadeモード利用可能。
- BYOK対応だが、IDE独自機能は Pro 契約が必須。
Continue
- ツール利用料はゼロ。
- モデルはすべて BYOK。OpenAI/Anthropic APIやローカルLLMを自由に設定できる。
注意点
ChatGPT Plus や Claude Pro / MAX などの Web アプリ課金プランは BYOK に使えない。これはアプリ利用権であり、APIキーは発行されない。BYOK に必要なのは APIキーが発行される従量課金契約(OpenAI API や Anthropic API)だ。
コスト比較(年間)
- Cursor:$240(追加料金なし)
- Windsurf:無料〜$120
- Continue:ツール$0+API代 $120〜360
向いている人/向かない人
Cursor
- 向いている人:効率重視/安定志向/VSCodeユーザー
- 向かない人:無料重視/OSS文化を最優先する人
Windsurf
- 向いている人:新しい体験を試したい/自動化を楽しみたい/多少の不具合は許容できる人
- 向かない人:安定性を最優先/日本語情報が豊富でないと困る人
Continue
- 向いている人:カスタマイズ志向/ローカルLLM利用/OSS好き/プライバシー重視
- 向かない人:設定が面倒/UI重視/すぐに安定稼働できる環境が欲しい人
まとめ
2025年秋のAI開発ツール市場はまさに戦国時代。
「どれが最強か」よりも「どれが自分のプロジェクトに合うか」を見極める柔軟さが重要だ。
- Cursor は効率と安定性を求めるなら最有力。
- Windsurf は革新性が高く、将来性に大きな期待が持てる。
- Continue は自由度とプライバシー重視で唯一無二。
完璧な答えを探すのではなく、まず 1 週間使ってみる。そして合わなければ次へ移る。このスピード感こそが、2025年のAI開発ツール時代を生き抜く鍵となる。
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