NICEHCK Himalaya レビュー|華やかな中域とスピード感、クールにまとまった1DD

音楽

はじめに

NICEHCK Himalaya は、同社ラインナップの中でも明確にフラッグシップ寄りに位置づけられる 1DD(ダイナミックドライバー1基)構成のイヤホンだ。価格帯は決して安くなく、いわゆる「中華イヤホンのコスパ枠」として語るモデルではない。

本レビューでは、過剰な賛美や「価格以上に鳴る」といった曖昧な表現を避け、実際に聴いて感じた音の完成度とキャラクターを、できるだけ整理して伝えていく。


試聴環境

  • DAP:iBasso DX340(4.4mmバランス)
  • 音源:Apple Music(ロスレス)
  • イヤーピース:純正(付属品)

音の骨格

Himalayaの音は、一言で言えば バランスの取れたクール系

低域・中域・高域のどこかを誇張する方向ではなく、スピード感と整理の良さを軸に、全帯域を均整よくまとめている。派手さよりも「整い」を重視したチューニングで、1DDらしい自然さと制動の良さが両立しているのが特徴だ。


スペック

  • ドライバー構成:10mm ダイナミックドライバー ×1
  • 振動板:CNT(カーボンナノチューブ)+LCP系複合振動板
  • インピーダンス:22Ω
  • 音圧感度:110dB
  • 再生周波数帯域:20~28,000Hz
  • コネクタ:0.78mm 2pin
  • 付属ケーブル:交換式プラグ対応(3.5mm / 2.5mm / 4.4mm)
  • 筐体:チタン系金属筐体

帯域ごとの詳細レビュー

低域

低域は「控えめ」と表現されることがあるが、実際には量が足りないわけではない。しっかり沈み込み、アタックも明確だ。

ただし、意図的に誇張はしておらず、余韻を引きずらない。その結果、タイトでスピード感のある低域として聴こえる。量感で押すタイプではないが、質は高く、制動の良さが際立つ。


中域

Himalayaの最大の魅力。

中域は華やかで、ボーカルが自然に前へ出てくる。厚化粧ではなく、明るさと見通しの良さを両立しており、DD一発構成としては中域の整理が非常に上手い。

男女ボーカルともにクセが少なく、ジャンルを問わず安定して楽しめる。


高域

高域はBAやESTを搭載したイヤホンほどの突き抜け感はないが、不足を感じることはない

無理に伸ばさず、DDらしい自然な上限で止めている印象で、ピーキーさや刺さりは抑えられている。情報量は十分で、輪郭も明瞭だ。


解像度・分離・音場

解像度は高く、音の分離も良好。CNT+LCP系振動板らしく立ち上がりが速く、音の切れが良いため、複雑な楽曲でも音が団子になりにくい。

音場は横方向に広がりがあり、定位も安定している。極端に広いわけではないが、1DDとしては十分な立体感を持つ。


音のキャラクター(温度感・質感)

音の温度感はややクール寄り。ウォームで甘い方向ではなく、理知的で落ち着いた質感を持つ。

金属筐体らしい引き締まりはあるが、硬質すぎることはなく、全体としてクリーンで品のある鳴り方だ。


長時間使用で見えたこと

派手さで引っ張るタイプではないため、長時間聴いても疲れにくい。帯域バランスが崩れず、音量を上げても破綻しにくいのは大きな利点。

「じわじわ良さが分かるタイプ」で、使い込むほど評価が安定していくイヤホンだと感じた。


弱点・注意点

  • 低音量感重視の人には物足りなく感じる可能性がある
  • BAやEST的な高域の突き抜け感を求める人には向かない
  • 価格帯は高めで、コスパ重視のモデルではない

まとめ

NICEHCK Himalayaは、

  • 派手すぎない
  • 地味でもない
  • モニターにもリスニングにも寄り切らない

という、非常にバランスの取れた1DDフラッグシップだ。

「価格以上に鳴る」と表現するのは正直言って言い過ぎだと思う。しかし、この価格帯に求められる音の完成度と質感には、きちんと応えてくるイヤホンでもある。

安くはないが、値段なりに良い。そして誠実に良い。

クールで整ったサウンドを長く楽しみたい人に向いた一本だ。

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