はじめに
Web3の世界では「0x〜」のような長いウォレットアドレスを、人が覚えやすい名前に変える仕組みが登場しています。
代表的なのが ENS (.eth) と Unstoppable Domains (.x)。
僕自身、両方を実際に取得して試してみました。
その過程で感じた違いや使い勝手、そして背景や仕組みを、初心者にも分かりやすいようにまとめていきます。
ENS (.eth) の解説と体験
ENSとは?
ENS(Ethereum Name Service)は2017年にEthereum財団がローンチしたプロジェクトです。
「Web3版のDNS」とも言える存在で、ウォレットアドレスを人間が読めるドメイン名に変換するサービス。
- 例:
vitalik.eth
→ 実際のアドレス0x1234...
に変換される - ERC-721(NFT規格)で管理され、所有権はNFTとしてEthereum上に記録される
- 2021年のエアドロップでENSトークンが配布され、一躍話題になった
特徴
- 拡張子は .eth のみ
- MetaMaskに標準対応 → 設定すれば即利用可能
- 更新料が必要 → 年間5ドル程度〜。短い文字列ほど高額
- 利用範囲が広い → DeFi、NFT、DAO、ウォレットなどEthereum系サービスのほぼ標準
使ってみた印象
ENSは「とにかく完成度が高い」。
MetaMaskに入れるとそのまま反映され、対応サービスも多いので、「自分のWeb3名刺」 として安心感があります。
デメリットは更新料くらいで、普及度を考えれば納得できるコスト。
Unstoppable Domains (.x) の解説と体験
Unstoppableとは?
Unstoppable Domainsは2018年に始まったサービスで、Polygonチェーン上のNFT として発行されます。
特徴は「買い切り」であること。ENSのように更新料は不要で、一度買えば永続的に所有可能です。
特徴
- 拡張子が複数 →
.x
,.crypto
,.wallet
,.dao
など - 更新料なし(買い切り型)
- プロフィール機能 → SNSやメールをまとめて名刺化できる
- Web3ログイン → OAuth風の仕組みでログインに使える
- IPFS連携 → ドメインを分散型Webサイトに割り当て可能
- 価格は文字数で変動 → 短いほど高額、長いほど安価
対応ウォレット
- Trust Wallet
- Brave Wallet
- Coinbase Wallet
- imToken / MEW mobile
- D’Cent Wallet など
MetaMaskは「所有登録」はできるけど、ドメイン解決には非対応。
使ってみた印象
正直、最初は「ネタ枠・実験枠だな」という印象。
- Pending Changesで待たされる → 数分〜数十分。初見は固まったかと焦った
- MetaMaskに表示されない → OpenSeaでは見えるが普段使うウォレットに存在感がない
- 対応ウォレットが限定的 → MetaMask中心だと恩恵を受けづらい
一方で「買い切り型」という安心感は大きい。ENSは更新料を忘れると失効してしまうが、.xは一度取得すれば放置でOK。
.xドメインの取り方
Unstoppable Domainsの購入は非常に簡単。
- 公式サイトにアクセス
- 欲しいドメインを検索(短いのは高額、長いのは安価)
- カートに入れて購入(クレカ・PayPal・暗号資産に対応)
- ウォレットに紐付け(ETHやBTCアドレスを登録)
ENSのような「年更新料」は不要で、一度買えばずっと自分のもの。
ENS と .x の違い(比較表)
項目 | ENS (.eth) | Unstoppable (.x) |
---|---|---|
発行チェーン | Ethereum メインネット | Polygon(NFTとして発行) |
更新料 | 年間5ドル程度〜(必須) | 買い切り、更新料なし |
拡張子 | .eth のみ | .x, .crypto, .wallet など複数 |
ウォレット対応 | MetaMaskにネイティブ対応 | Trust Wallet, Brave Wallet, Coinbase Wallet など |
対応サービス | DeFi, NFT, DAOなどEthereum系で広く普及 | Web3ログインやプロフィール機能に注力。対応範囲はまだ限定的 |
表示 | MetaMaskで自動表示される | MetaMaskには表示されず、OpenSeaなどで確認 |
価格 | 比較的安いが毎年支払い必要 | 文字数で価格が変動(短いほど高額) |
使い心地 | 安心して「名刺代わり」にできる | 実験・ネタ枠として触ると面白い |
他のWeb3ドメイン
ENSとUnstoppable以外にも、Web3ドメインの試みはあります。
- Handshake (HNS)
→ 独自のブロックチェーンを使い、DNSのルートを分散化しようとするプロジェクト。 - .btc (Stacks)
→ BitcoinのサイドチェーンStacks上で管理されるドメイン。Bitcoinアドレスに紐づけ可能。 - SID (.bnb)
→ Binance Smart Chain上で展開されるドメインサービス。
ただし、普及度や互換性を考えると、現時点で実際に使えるのは ENS、遊びで試すなら .x という立ち位置が一番現実的です。
まとめ
Web3ドメインを実際に触ってみて分かったのは、ENS (.eth) と Unstoppable (.x) には明確な役割の違いがあるということです。
ENS (.eth)
- 結論
Web3で本気で活動するなら必ず押さえておくべきドメイン。 - 実用性の高さ
Ethereumメインネットで動いているため、DeFiやNFTなど主要サービスのほとんどで利用可能。 - ウォレット対応
MetaMaskをはじめとした主要ウォレットに標準対応しているので、「名刺代わり」としてすぐに機能する。 - 更新料が必要
年間5ドル程度〜かかるが、普及度と信頼感を考えれば十分納得できるコスト。
Unstoppable (.x)
- 結論
現状は「実験枠・ネタ枠」。触って学んだり、記事ネタにするのにはちょうどいい。 - 買い切り型の安心感
一度購入すれば更新料が不要で、失効リスクがない。放置しても資産として残る。 - 機能的特徴
プロフィール作成やWeb3ログイン、IPFSへのマッピングなど、ENSにはない方向性を持つ。 - 対応ウォレットが限定的
MetaMaskでは解決されず、Trust WalletやBrave Walletなど特定のウォレットが必須。 - 価格は文字数次第
短い文字列は高額だが、長い文字列なら比較的安価に手に入る。
これから取るならどっち?
- まずENS (.eth)
Ethereum系サービスで標準的に使えるので、Web3で活動するなら必須級。MetaMaskとの相性も抜群。 - 余裕があれば.x
買い切りで安心。ネタや実験用に触るのは面白いし、長めの文字列なら安価に入手できる。ただし、現時点では「遊び」や「学び」の範囲にとどまる。
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