はじめに
最近、OpenClawがかなり話題になっています。
オープンソースで動かせるAIアシスタント、しかもDiscordやWeb UIから触れて、モデルも差し替えられる。要するに、「自分専用のAIアシスタントを自分の環境に置ける」という話です。
こういうものは、説明を読むだけだとよくわかったようでいて、実際にはどこまで使えるのかが見えにくい。セットアップが重いのか、最初から実用になるのか、それとも結局“触って終わり”なのか。このあたりは、自分で立ててみるのが一番早いです。
そこで今回は、OpenClawをOCI(Oracle Cloud Infrastructure)のarm64インスタンスに立てて、初日の2〜3時間で何ができたかをまとめます。
結論から言うと、数時間触るだけでも“実用ライン”までは普通に到達できます。
単なるお試しではなく、Discordから呼び出せて、Google Workspaceにもつながって、Obsidianとも連携するところまで持っていけました。完成されたプロダクトというよりはまだ発展途上のOSSですが、「自分専用のAIアシスタントを自分のサーバーに置く」という体験としては、初日でもう十分面白いです。
OpenClawって何?
OpenClawは、オープンソースのパーソナルAIアシスタントフレームワークです。
一言でいうと、「自分専用のChatGPTをサーバーに常駐させるもの」です。
ChatGPTやGeminiのようにブラウザを開いて使うのではなく、
- 自分のサーバー上で動く
- DiscordやWeb UIからいつでも呼び出せる
- モデルを自分で差し替えられる
というのが特徴です。最近話題になっているのも、単にAIチャットができるからではなく、「自分の道具として持てる」 方向のOSSだからだと思います。
OpenClawの設定は ~/.openclaw/openclaw.json を中心に行い、公式ドキュメントでも channels・models・tools・automation などをここで管理する前提になっています。
インフラ構成
- OS: Ubuntu 24.04 (arm64)
- リバースプロキシ: Caddy(SSL自動取得)
- ドメイン: 独自ドメインでアクセス
- 認証: Token認証 + allowedOrigins制限
構成自体はかなりシンプルです。
ただ、ポイントは「全部自分の管理下にある」ことです。外部のAIサービスを使うというより、自分の環境にAIアシスタントを置く、という感覚に近いです。
初日の2〜3時間でやったこと
1. OpenClaw本体のセットアップ
Gatewayをsystemdで動かして常駐化しました。
この手のものは、手動起動でも最初は動きます。ただ、サーバー再起動やプロセス落ちのたびに手で上げ直すのは普通にだるいので、最初からsystemd管理にしておいた方が楽です。
Web UI(Control UI)も有効にしました。スマホのブラウザからもアクセスできます。PCを開かなくても触れるだけで利用のハードルがかなり下がるので、ここは思ったより効きます。
OpenClawが気になっていた理由の一つが、「ちゃんと常用できる場所に置けるのか」だったのですが、この時点でかなり感触はよかったです。
2. Discord連携
自分のDiscordサーバーにボットを設置しました。
- DMでも反応
- グループでも反応
- モデル切り替えも可能
AIツールは、機能よりも「どこから呼べるか」の方が案外大事です。ブラウザで専用画面を開く必要があるだけで、利用頻度は露骨に落ちます。その点、普段から開いているDiscordにいるだけでだいぶ違います。
最近話題のAIアシスタント系OSSはいろいろありますが、結局「自分の生活動線に乗るか」が大きい。その意味で、Discord連携はかなり重要でした。
3. モデル選択肢の追加
デフォルトは openrouter/healer-alpha。そこに openrouter/hunter-alpha も追加しました。
| モデル | 位置づけ |
|---|---|
openrouter/healer-alpha | 普段使い向けのデフォルト |
openrouter/hunter-alpha | より重いタスク向けの上位候補 |
OpenClawのCLIでは models set <model-or-alias> が使え、provider/model 形式かエイリアスでモデルを指定できます。OpenRouter形式のモデルIDは / を含むので、公式ドキュメントどおり provider prefix 付きで扱うのが前提です。
話題のOSSを触るとき、個人的に気になるのは「結局どのモデルを積むと気持ちよく使えるのか」です。OpenClawもそこがかなり大きく、単に起動するだけではなく、モデル選択まで含めて初期体験が決まる印象でした。
openrouter/healer-alpha について
healer-alpha は OpenRouter 上では 2026年3月11日リリース、262,144トークンのコンテキスト、入出力とも $0/M とされていて、説明文では omni-modal model with vision, hearing, reasoning, and action capabilities とされています。つまり、テキストだけの軽量モデルではなく、視覚・音声・推論・アクションまで含む“エージェント用途を強く意識した無料モデル”という立ち位置です。なお OpenRouter には、「このモデルの prompts / completions は provider にログされ、改善に使われる可能性がある」と明記されています。
これを実際にOpenClawで使ってみると、印象としては**「まずはこれで十分」**です。
雑な質問、軽い要約、ちょっとした調べもの、普段の会話にはかなり使いやすい。速度も悪くありません。
ただし、ここで大事なのは「無料だから軽いモデル」ではないことです。OpenRouterの説明からして、これは無料枠の“おまけ”というより、エージェント用途の導線としてかなり本気で置かれているモデルです。だから、最近話題のOpenClawをとりあえず触ってみたい、という用途にはかなり合っています。無料で使えて、しかもOpenClawの良さがわかりやすい。
openrouter/hunter-alpha について
hunter-alpha は OpenRouter 上では 2026年3月11日リリース、1,048,576トークンのコンテキスト、入出力とも $0/M とされていて、説明文では 1 Trillion parameter + 1M token context frontier intelligence model built for agentic use、さらに long-horizon planning, complex reasoning, sustained multi-step task execution に強いとされています。こちらも同様に、プロンプトと出力は provider にログされ得ると明記されています。
こっちは明らかに**「重い仕事をさせる前提」のモデル**です。
OpenRouterの説明どおりなら、長文コンテキストと複雑な推論、多段のタスク実行が売りです。なので、OpenClawのような「会話だけで終わらないエージェント」に載せるモデルとしては筋がいい。
実際の体感でも、healer-alpha より一段重い仕事を任せたいときに試したくなるモデルです。長い指示、複数条件の整理、少し考えさせるタスクとの相性が良さそう、という印象でした。
ただし、これは私の利用感も含むので、性能評価として断言しすぎるのは危ない。少なくとも仕様上は、hunter-alpha の方が「長文・長期計画・複雑推論寄り」なのはかなり明確です。
今だけの可能性が高い、という話
ここはかなり重要です。
現時点では healer-alpha と hunter-alpha は OpenRouter 上で無料表示になっています。ただ、この手のモデルは、
- 突然有料化される
- 提供が終了する
- 名前は同じでも中身が変わる
といったことが普通に起きます。
なので、この記事を読んで後から試す人に対しては、
- 今は使えるかもしれない
- でも、来週も同じ条件とは限らない
- 無料のまま残る保証はない
と見ておくのが現実的です。
無料だから安心、ではなく、今たまたま条件が良いくらいに考えておいた方がいいです。
4. Obsidian連携
これは今回かなり良かった部分です。
前提として、私はObsidianのvaultをもともとGitHubと連携させています。Mac側のObsidianはそのvaultを使っていて、Gitベースで同期する運用です。
なので今回は、その既存vaultをOCI上にも clone して、OpenClawの記憶ファイル(MEMORY.md や SOUL.md など)をそのvault配下にシンボリックリンクでつなぎました。
仕組みとしてはこんな感じです。
- OCI上にObsidian vaultを clone
- OpenClawの記憶ファイルをvault側から参照
- 1時間ごとに git pull / push
- Mac側のObsidianはGitプラグインで同期
これで何が起きるかというと、
- 自分がObsidianで書いた内容をAIが参照する
- AIが更新した記憶を自分がObsidianで読む
という状態になります。
ここをちゃんと書かないと「Obsidian連携」と言っても意味がわからないのですが、要するにもともと自分の知識管理基盤として使っているObsidian vaultに、OpenClawの記憶を合流させたということです。
これがかなり大きい。AI専用の別ストレージではなく、普段使っているノートと同じ文脈に乗るので、記憶が孤立しません。
OpenClawが最近注目されている理由の一つに「記憶を持てること」があると思いますが、それを自分の既存環境にどう馴染ませるかまで考えると、こういう連携はかなり相性がいいです。
5. Google Workspace連携
gogcli(Google OAuth CLI)を設定して、以下のサービスにアクセスできるようにしました。
- Gmail — 未読メールの確認、検索
- Calendar — 予定の確認
- Google Docs — ドキュメントの作成・読み取り
- Drive — ファイル操作
GmailのPub/Subによるリアルタイム通知は今回は入れていません。
最初はそこまでやるつもりでしたが、実際に触ってみると、手動確認でも十分使えます。むしろ初日は、連携先を増やしすぎるより、まず「ちゃんと使える状態」を作る方が大事でした。
OpenClawの面白いところは、単なるチャットUIではなく、こうした外部サービスとの接続を前提にしているところです。ここまでつながると、単なる“AIで遊んでみた”ではなく、かなり実用側に寄ってきます。
6. セキュリティ整備
初日なので、最低限のセキュリティも整理しました。
- 設定ファイルの権限を
600に変更 - Discordの
groupPolicyをopenからallowlistに変更 - Configの自動バックアップをGitHub private repoに保存
この手のものは、あとから締めようとすると面倒です。
特に外から叩ける状態にするなら、最初に「最低限は閉める」方が結果的に楽です。
OpenClawのような“自分で持つAI”は自由度が高いぶん、最初のセキュリティ設定がそのまま使い勝手に直結します。このあたりはサービス型のAIとは違う、セルフホストらしい部分です。
費用はいくらかかっているのか
ほぼゼロ円です。
| サービス | 費用 |
|---|---|
| OCI(arm64) | 無料枠あり |
| OpenClaw | オープンソース、無料 |
| healer-alpha / hunter-alpha | OpenRouter上では現時点で $0/M |
| Brave Search API | 月1,000回まで無料 |
| Google Workspace | 既存アカウント |
特に healer-alpha と hunter-alpha は現時点では OpenRouter 上で無料表示ですが、さっき書いたとおり、これは恒久保証ではありません。無料だから安心、ではなく、今たまたま条件が良いくらいに見ておくのが無難です。
最近話題のOSSは、触る前に「結局いくらかかるの?」が一番気になることも多いですが、この点はかなり入りやすいです。少なくとも最初の体験コストは低い。
難しかったこと
モデル切り替えのUIバグ
Control UIのドロップダウンでモデルを切り替えると、「model not allowed」エラーが出ました。
一方で、チャットから /model で切り替えると正常に動きます。OpenClawのモデルまわりは provider/model と alias の扱いが明確に定義されているので、少なくともCLI / slash command 側の方が筋が良い、という印象です。UI側の同期か解決の問題っぽいです。
最近話題のOSSらしく、このへんはまだ粗さがあります。逆に言えば、こういう「ちょっと荒いけど面白い」感じも含めて今のOpenClawっぽさではあります。
configの破損
OpenClawの設定ファイル(openclaw.json)を1回壊しました。
OpenClawの設定は ~/.openclaw/openclaw.json に集約されていて、models・channels・tools・automation までここに乗るので、壊すと地味に面倒です。公式にも openclaw onboard や openclaw configure、openclaw config set などの導線が用意されているので、雑に直接編集し続けるより、戻せる手段を先に作っておく方がいいです。
まとめ
初日の2〜3時間でここまでできました。
- 📧 メールチェック
- 📅 スケジュール確認
- 📝 記憶の管理(Obsidian連携)
- 💬 Discord/スマホからの常時アクセス
- 📄 Google Docsの作成
正直、「もう十分使える」というところまではかなり早く行けます。
一方で、
- UIはまだ荒い
- configは壊すと面倒
- 無料モデルは今後どうなるかわからない
という現実もあります。
ただ、それを含めても、自分専用のAIアシスタントが自分のサーバーで常駐するという体験はかなり面白いです。最近話題のOpenClaw、実際どうなんだろうと思っているなら、まずは数時間だけ触ってみる価値は十分あります。とくに healer-alpha と hunter-alpha のような、今たまたま条件の良い無料モデルを試せるタイミングなら、短時間でも「ここまでできるのか」という感触は得やすいはずです。


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