音質重視派が選ぶ音楽ストリーミングサービス比較 2025

音楽

はじめに

音楽ストリーミングサービスは便利ですが、音質面ではサービスごとに差があります。
本記事では、音質重視派の視点で主要サービスを比較し、IER-Z1R + iBasso DX340というハイエンド環境で試聴した印象をまとめます。
※TIDALはアカウント未所持のため比較対象外としています。

DX340とIER-Z1R

視聴環境

  • DAP:iBasso DX340(4.4mmバランス接続)
  • IEM:SONY IER-Z1R
  • イヤーピース:AZLA SednaEarfit XELASTEC II
  • ケーブル:純正4.4mmバランスケーブル
  • 試聴設定:各サービスの最高音質設定に固定

試聴曲

ジャンルや録音傾向が異なる名曲を選び、各サービスの特徴を把握しやすくしています。

  • クラシック:ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」第2楽章(オーケストラの壮大さ・奥行き・楽器の分離感)
  • ジャズ:Bill Evans Trio「Alice in Wonderland」(ピアノの余韻、ウッドベースの定位感、ドラムブラシの質感)
  • J-POP①:宇多田ヒカル「First Love」(ボーカルの近さ・低域の量感・感情表現のニュアンス)
  • J-POP②:MISIA「Everything」(ボーカルの伸び・中高域の広がり・ダイナミックレンジ)

Apple Music

  • 形式/最大音質:ALAC(可逆※1)/最大 24bit・192kHz
  • 総評
    いちばん“整っている”音。定位はシャープで左右の見通しがよく、低域はタイト、輪郭はクール。量感で押すタイプではないけれど、微小音の出入りが滑らかで、ホールの残響やリバーブ尾が綺麗に伸びる。ステージは横に広く、奥行きは中の上。長時間聴いても疲れない“基準機”ポジション。
  • 曲別の聴きどころ
    • 「新世界より」第2楽章:イングリッシュホルンの前後位置が明確。弦のトレモロが濁らず層を保つ
    • Alice in Wonderland:ピアノのアタック~減衰のグラデーションが自然で、ブラシの粒立ちが細かく残る。
    • First Love:サ行が出過ぎず、ボーカルのセンター像がカチッと決まる。
    • Everything:サビの厚みが面で膨らみ、コーラスの分離が破綻しない
  • ※1 可逆(ロスレス)=圧縮しても元に戻る形式

Qobuz

  • 形式/最大音質:FLAC(可逆)/最大 24bit・192kHz
  • 総評
    解像度と空間表現が最も伸びる。空気の密度が一段薄くなったように抜けがよく高域の伸び・余韻の“空気”が出る。IER-Z1Rの広大な音場が縦にも奥にも拡がる印象。音の重心はやや軽めだが、情報量で押し切るタイプ。
  • 曲別の聴きどころ
    • 「新世界より」第2楽章:弦のレイヤーが前後に積み上がる。弱音部のホールトーンの浮遊感が抜群。
    • Alice in Wonderland:ピアノのハンマー感~響板の鳴りまで見える。ウッドベースの胴鳴りが立体的。
    • First Love:ブレスの微細な風圧が聴き取れ、リバーブの消え際が長い。
    • Everything:高域の伸びとハイトーンの艶が気持ちいい。

Amazon Music Unlimited

  • 形式/最大音質:FLAC(可逆)/HD=16bit・44.1kHz、Ultra HD=最大 24bit・192kHz
  • 総評
    中低域の厚み腰の据わった量感が魅力。ベースやキックに“質量”が出て、IER-Z1Rの低域の懐を気持ちよく鳴らせる。上はスムース寄りで、刺さりにくい。その代わり超高域の開放感はQobuzに一歩譲る。ステージは広めだがやや前寄り、ノリの良さ◎。
  • 曲別の聴きどころ
    • 「新世界より」第2楽章:低弦の量感と床の揺れが出る。金管のフォルテも角が立ちにくい
    • Alice in Wonderland:ウッドベースの胴鳴りと指の離れが太い。
    • First Love:ボーカルの胸声の厚みが増し、下支えが心地よい。
    • Everythingサビの土台(ベース/キック)がしっかり張って、歌が前に出る。

Spotify(Premium)

  • 形式/最大音質:Ogg Vorbis ~約320kbps
  • 総評
    ロッシー(※2)の限界はあるが、中域の押し出しが良く“歌が主役になりやすい。シンバルの倍音がやや粗れ、リバーブ尾の消え際が短い場面がある一方、グルーヴの乗りやすさは健在。音場は平面的になりがちだが、移動中BGMなら十分に楽しい。
  • 曲別の聴きどころ
    • 「新世界より」第2楽章:弦のテクスチャが簡略化され、奥行きは控えめ。
    • Alice in Wonderland:ハイハットの粒子が荒れ、ピアノの余韻が短く感じる
    • First Love:ボーカルは手前に出るが、細かな息遣いの階調はやや省略。
    • Everything:サビの密度感は出るが、コーラス層の分離は可逆勢に劣る。
  • ※2 ロッシー=一部情報を捨てる圧縮形式

YouTube Music

  • 形式/最大音質:AAC/OPUS 上限 256kbps
  • 総評
    中高域の見通しは良好でボーカルは聴きやすいが、IER-Z1Rだとホールの空気や微小な残響の情報量で可逆勢に差。ステレオ像は中央寄りになり、立体感は控えめ。ただしMV/ライブ連携の利便はダントツ。
  • 曲別の聴きどころ
    • 「新世界より」第2楽章:ホールトーンの尾が短く、奥行き表現は簡素。
    • Alice in Wonderlandシンバルの余韻が早めに切れ、ピアノの鍵盤の重さが軽め。
    • First Love子音のエッジがわずかに強調されがちだが、歌の輪郭は掴みやすい。
    • Everything:大サビの開放感は出るが、コーラスの層の厚みは薄め。

まとめ

それぞれのサービスは音質傾向や強みが異なります。

  • Apple Music:音の厚みと滑らかさに優れ、ジャンルを問わず高水準。迷ったらこれ。
  • Qobuz:自然な解像感と空間表現が光り、クラシックやジャズの再現力は随一。
  • Amazon Music Unlimited:邦楽・洋楽とも充実し、解像度とシャープさを両立。
  • Spotify / YouTube Music:音質より利便性・軽快さ重視のカジュアルリスニング向け。
主観評価。試聴環境: IER-Z1R + DX340 / 2025年8月時点

最終的な選択は、「機材」「聴くジャンル」「好みの音質傾向」によって決まります。
もし迷うなら、まずはApple MusicやAmazon Music Unlimitedの無料期間で試し、音質やUIの相性を確認しましょう。
そのうえで、より専門的な音を求めるならQobuz、日常的なBGMやプレイリスト重視ならSpotifyやYouTube Musicへ移行すると失敗が少ないです。

音楽は「聴く環境 × サービスの音作り」の掛け算で化けます。
自分の耳と機材に合うストリーミングを見つけて、日常の音を“最高の一曲”に変えてみてください。

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