はじめに
秋から冬へと季節が移り変わると、香水はその魅力を一層際立たせます。
夏場は気温が高く、香りがすぐに飛んでしまうため軽やかなフレグランスが好まれますが、寒さの中では香りは肌に長く留まり、トップからラストまでの変化をじっくり楽しむことができます。
さらに、ウッディやバニラ、タバコ、レザーといった温かみのある香調は、冷たい空気や厚手のコート・マフラーと相性抜群です。重厚で甘さを含むフレグランスは、秋冬にこそ「自分らしい香り」として存在感を放ち、周囲にも印象的な余韻を残します。
今回は、私自身のコレクションの中から 「秋冬にこそ纏いたい」 と感じる5本を厳選しました。どれも名作と呼ぶにふさわしい香水たちで、季節とともに香りの魅力が際立ちます。
Creed – Aventus(クリード アバントゥス)
ノート
- トップ: パイナップル、ベルガモット、ブラックカラント、アップル
- ミドル: バーチ(白樺)、パチュリ、ジャスミン、ローズ
- ラスト: ムスク、オークモス、アンバーグリス、バニラ
解説
フレグランス界の象徴的存在。トップはフルーティーで華やかですが、秋冬に使うとバーチのスモーキーさやムスクが主役となり、渋みのある大人びた印象を与えます。
夏は「勝利の英雄」、冬は「威厳ある紳士」と、二つの顔を持つ一本。都会的で洗練された冬のスタイルにふさわしい名香です。
Givenchy – Pi(ジバンシィ パイ オードトワレ)
ノート
- トップ: オレンジ(マンダリン)、ガルバナム
- ラスト: ベンゾイン、ガイアックウッド
解説
90年代後半に登場したクラシカルなグルマンフレグランス。トップは柑橘とグリーンの軽やかさですが、すぐにベンゾインとガイアックウッドの温かく樹脂的な甘さに包まれます。
シンプルな構成ながら、バニラを思わせる安らぎと懐かしさが冬の寒さに寄り添います。休日や夜のリラックスタイムに、ホットドリンクのような安心感を与える一本。
Penhaligon’s – The Tragedy of Lord George(ペンハリガン ザ・トラジェディ・オブ・ロード・ジョージ)
ノート
- ラム
- アンバーグリス(アンブロクサン)
- トンカビーン
- ウッディノート
解説
ポートレートシリーズを代表する重厚な香り。ラムのアルコール感を思わせる立ち上がりから、トンカビーンの甘さ、アンバーグリスの艶やかさが広がり、最後はウッディな落ち着きに着地します。
レビューで語られる「シェービングソープの清潔感」もこのブレンドが生む印象のひとつ。英国紳士のようにフォーマルで威厳ある香りは、冬の夜や特別な場面にぴったりです。
Guerlain – L’Homme Idéal (ゲラン ロム イデアル)
ノート
- トップ: シトラス、オレンジブロッサム、ローズマリー
- ミドル: アーモンド、トンカビーン
- ラスト: レザー、ベチバー、シダー
解説
「理想の男」という名を冠するフレグランス。トップのシトラスとローズマリーがフレッシュに始まり、ミドルでアーモンドとトンカビーンが柔らかな甘さを添えます。
最後はレザー、ベチバー、シダーのウッディが深みを加え、甘さと渋さが見事に調和。秋冬の乾いた空気に馴染み、デートや会食など「大人の場」で映える万能な一本です。
Tom Ford – Tobacco Vanille(トム フォード タバコ バニラ)
ノート
- トップ: タバコ、スパイス
- ミドル: バニラ、カカオ、トンカビーン、タバコフラワー
- ラスト: ドライフルーツ、ウッディ
解説
冬香水の王者と呼ばれる名作。冒頭のタバコとスパイスで重厚さを提示し、バニラとカカオ、トンカビーンが濃厚な甘さを織り成します。ラストではドライフルーツやウッディが奥行きを与え、余韻が長く続きます。
マフラーやコートに残る香りは、まさに「冬の夜の象徴」。特別なイベントや非日常を演出したい時に最適です。
まとめ
今回紹介した5本は、それぞれが異なる方向性を持ちながら、共通して 「秋冬の冷たい空気と調和する甘さ・渋み・重厚感」 を備えています。
- Aventus(アバントゥス):冬にはスモーキーで威厳ある表情へ
- Pi(パイ):シンプルに心を温めるグルマンの安らぎ
- Lord George(ロード・ジョージ):アルコール感とソープ調が織り成す英国紳士的重厚さ
- L’Homme Idéal Parfum(ロム イデアル パルファン):甘さと渋さを見事に調和させた万能型
- Tobacco Vanille(タバコ バニラ):冬の夜を象徴する濃厚でドラマチックな存在
秋冬は香水の魅力がもっとも輝く季節。自分のライフスタイルや装いに合う一本を選んで、この季節を香りとともに楽しんでください。








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