はじめに
Web開発において、どのWebサーバーを選ぶかは開発体験や運用コストに直結します。
長らく「定番」として利用されてきたのはnginxですが、ここ数年で急速に注目を集めているのが Caddy です。
本記事では、Apache → nginx → Caddy というWebサーバーの進化を振り返りながら、両者を比較して解説します。絶対的な優劣を決めるのではなく、プロジェクトの要件に合わせて最適な選択をするための参考としてご覧ください。
Webサーバーの進化をざっくり整理
Apache時代(1995年〜2000年代)
豊富な機能を備えたApacheは、一時代を築いた存在でした。ただし、設定は冗長で高負荷時にはパフォーマンスの問題も…。
<VirtualHost *:80>
ServerName example.com
DocumentRoot /var/www/html
...
</VirtualHost>
「動くけど設定が大変」というのがApache時代の現実でした。
nginx時代(2004年〜現在)
nginxは軽量で高速、設定も比較的シンプル。
Apacheの弱点を克服し、一気に広く普及しました。
しかしSSL証明書の管理やリバースプロキシの設定には、まだ専門的な知識が必要です。
Caddy時代(2015年〜)
Caddyは「自動化」と「シンプルさ」をさらに徹底した設計が特徴。
HTTPS対応や証明書更新をすべて自動で処理してくれる点が、モダンなWebアプリ開発と相性抜群です。
nginxで直面しやすい課題
典型的なのがSSL対応。nginxでHTTPS化するには、30行を超える設定+certbotによる証明書更新タスクが必要です。
server {
listen 443 ssl http2;
server_name example.com;
ssl_certificate /etc/letsencrypt/live/example.com/fullchain.pem;
ssl_certificate_key /etc/letsencrypt/live/example.com/privkey.pem;
...
location / {
proxy_pass http://localhost:3000;
...
}
}
課題は以下のとおり:
- 設定が長く複雑
- 証明書の更新作業が必要
- セキュリティヘッダーも都度手動で設定
- 新しいドメイン追加が面倒
Caddyならどうなる?
同じことをCaddyでやると、たった3行。
example.com {
reverse_proxy localhost:3000
}
これだけで次が自動化されます:
- HTTPS化(Let’s Encrypt対応)
- 証明書の取得&自動更新
- セキュリティヘッダーの適用
- HTTP→HTTPSリダイレクト
複数サービスやロードバランシングもシンプルに書けるのが強みです。
実プロジェクトでの比較
- nginx → 設定60行、証明書管理・更新タスクあり
- Caddy → 設定10行程度、証明書更新は自動
HTTP/3もCaddyなら設定ひとつで有効化できます。
「とにかくすぐ動かしたい」小規模〜中規模のアプリでは圧倒的に楽です。
どんな時にCaddyを選ぶべきか?
Caddyが向いているケース
- 新規プロジェクトの立ち上げ
- 小〜中規模のWebアプリ
- SSL管理を自動化したい
- 運用経験が少ないチーム
- 迅速なデプロイを重視する場面
nginxが有利なケース
- 既存のnginx設定資産を活かしたい
- 細かいカスタマイズが必須
- チームがnginxに熟知している
- 巨大トラフィックを裁く必要がある
まとめ
Webサーバーの進化は Apache → nginx → Caddy と進んできました。
nginxは今後も多くの現場で使われ続けるでしょうが、新規開発やリニューアルではCaddyを検討する価値が十分にあると言えます。
特に次のような場面では、Caddyの導入効果を実感できるはずです:
- 短期間で立ち上げたい新規案件
- 証明書管理の手間を減らしたい
- シンプルで保守しやすい構成にしたい
- モダンプロトコル(HTTP/3など)をすぐに試したい
要は「どちらが優れているか」ではなく、どちらが自分のプロジェクトに合っているか。
次の開発で「今回はCaddyを使ってみようか」という会話が出たなら、この記事の目的は達成です。
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