はじめに
イヤホンの音は「本体のドライバー」で決まる? もちろん大部分はそうです。
でも実際に耳に届く音を左右しているのは、意外にもイヤーピースの影響が大きい。
耳との密閉度、ノズルの開口部、素材の硬さや厚み……。
これらの違いが、低音の出方や高域の伸び、ボーカルの距離感までも変えてしまいます。
今回は SONY ハイブリッドイヤーピース を基準に、人気の9種類を比較しながら「音がどう変わるか」「どんな人に合うか」を解説します。
基準:SONY ハイブリッドイヤーピース
SONY純正のハイブリッドイヤーピースは、多くのユーザーにとって最初に出会う“基準点”。
- 音質:ややウォーム寄り。中域が厚く、高音の刺さりを抑える。
- 装着感:軽く柔らかい。長時間でも疲れにくい。
- 印象:派手さはないが安定していて、どんな音源でも安心して聴けるバランス型。
この「無難さ」を基準に、他のイヤーピースがどうキャラクターを変えるかを見ていきます。
AZLA SednaEarfit XELASTEC II
- 変化点:高域が鋭く伸び、解像度が増す。低域は基準より軽め。
- 聴感:モニター的でシャープ。弦楽器やハイハットがくっきり浮かぶ。
- 装着感:体温で軟化し、耳に吸いつくようにフィット。ただし夏場のベタつきや劣化が早いのは弱点。
- 印象:細かい音を拾いたいリスナー向き。低音より透明感を重視する人に。
AZLA SednaEarfit MAX
- 変化点:低音が豊かになりつつ、中高域の透明感も保つ。
- 聴感:全体に厚みが増し、余裕のあるサウンドに。
- 装着感:かゆくなりにくく、変形にも強い。長時間リスニングに向く。
- 印象:バランスを取りつつリッチさを加える万能タイプ。
日本ディックス Pentaconn COREIR AL ALLOY
- 変化点:低域がタイトに引き締まり、中高域が明瞭。音場の輪郭がシャープに。
- 聴感:パンチが効いてアタック感が増す。リズムものとの相性良好。
- 装着感:金属コアの堅さが耳に伝わり、長時間では疲れる人もいる。
- 印象:スピード感と解像度を重視する人に。EDMや打ち込み系に◎。
radius ディープマウント ZONE
- 変化点:低域が力強く沈み込み、音の厚みがグッと増す。
- 聴感:サブベースがしっかり鳴る一方、中高域も潰れにくく、迫力と抜け感を両立。クラブサウンド的な臨場感が出る。
- 装着感:耳の奥までしっかりフィットし、遮音性も高い。ただし圧迫感を感じる人もいる。
- 印象:重低音と立体感を求めるリスナーに最適。EDMや映画鑑賞で真価を発揮する。
Final Eタイプ
- 変化点:低音に厚みが増し、ボーカルが前に出る。中域が温かい。
- 聴感:濃厚でリッチ。ポップスや歌モノが映える。
- 装着感:柔らかくフィット感良好。サイズ展開も豊富。
- 印象:クセが少なく、手軽に“濃い音”に寄せられる万能タイプ。
Final FUSION-G
- 変化点:低域の厚みと高域の抜けを両立。Eタイプよりレンジ感が広い。
- 聴感:フラット寄りで自然。長時間聴いても聴き疲れしにくい。
- 装着感:外側は柔らかく、内側はしっかり支える構造で安定感が高い。
- 印象:Eタイプの進化版ともいえるバランス型。万能さと快適さを強化した仕上がり。
JVC SpiralDot++
- 変化点:高域が自然に伸び、音場が広がる。中域の透明感も向上。
- 聴感:抜けの良いサウンド。定位が安定し、全体にナチュラル。
- 装着感:柔らかく、耳当たりが優しい。長時間でも快適。
- 印象:クセを加えず、全体を自然に整えたい人に最適。
SpinFitシリーズ
- 変化点:高域が明るくなり、定位がシャープ。低域はやや軽め。
- 聴感:音場が広がり、スッキリしたバランス。
- 装着感:耳の形によって安定感が変わる。合う人には最高だが、合わない人も。
- 印象:空間表現を重視する人におすすめ。ジャズやクラシック向き。
まとめ:イヤーピースは“最後のEQ”
イヤーピースは単なる消耗品ではなく、「イヤホンの音をガラリと変えるチューニングパーツ」です。
今回比較しただけでも、低音の沈み込みが増すもの、ボーカルが前に出るもの、空間の広がりを感じさせるものなど、キャラクターはまるで別物。
- ニュートラルな基準 → SONY ハイブリッドイヤーピース
- しっかりした装着感と安定性 → AZLA SednaEarfit MAX / XELASTEC II
- 金属コアでタイト&クリーン → Pentaconn COREIR AL ALLOY
- 濃厚で音楽的な鳴り → final Eタイプ / FUSION-G
- 重低音と立体感で没入 → radius ディープマウント ZONE
- 高域の抜け感と空気感 → JVC SpiralDot++
- 安定した定番のシリーズ展開 → SpinFitシリーズ
こう並べてみると、イヤホン本体の個性に“足し算・引き算”するような楽しみ方ができるのが分かると思います。
同じイヤホンでも、イヤーピースを変えるだけで「別の機種を聴いているように感じる」ことも珍しくありません。
結局のところ「正解」は一つではなく、自分の耳・音楽ジャンル・装着の快適さによってベストは変わります。
だからこそ、いろいろ試す価値があるし、気に入った組み合わせに出会えたときの満足感はひとしお。
イヤホンを新しく買うのも楽しいですが、まずはイヤーピースを交換して“音の冒険”をしてみるのもおすすめです。替えるよりずっと安く、手軽に音をチューニングできる。
「今の音に何か物足りなさを感じる」とき、まず試すべきはイヤーピースかもしれません。
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