はじめに
仮想通貨と聞くと「値動きが激しい」というイメージが真っ先に浮かびますが、もうひとつ日常で使いづらい理由があります。
それは 単位のわかりにくさ です。
たとえばビットコイン(BTC)。2025年8月現在、1 BTC は 約1,700万円もします。
だから、実際の取引は 0.0005 BTC や 0.0012 BTC といった小数点だらけの金額になります。
「これ、日本円でいくらになるの…?」と毎回計算が必要で、決済手段としては直感的でもヒューマンフレンドリーでもありません。
そこで登場するのが ステーブルコイン。
たとえば 1 USDC = 1ドル のように、法定通貨と同じ価値で動いてくれるため、金額の感覚がシンプル。
「コンビニで100円の水を買うなら、1ドル相当のステーブルコインを支払う」という直感的な感覚で使えます。
ステーブルコインは「仮想通貨は投機だけ」と思っている人にとって、Web3の“実用面”を理解するための入り口になる存在です。
ステーブルコインとは?
ステーブルコイン(Stablecoin)とは、価値を安定させることを目的とした暗号資産です。
普通の仮想通貨(BTCやETH)はボラティリティが大きく、数時間で数%変動することも珍しくありません。
これでは日常的な決済や送金には使いづらい。
そこで「法定通貨や資産と連動させて、価格を安定させた暗号資産」が生まれました。
これがステーブルコインです。
簡単に言えば、ブロックチェーン上で動く“デジタル版ドル” です。
ステーブルコインの種類と仕組み
ステーブルコインは裏付け資産の違いによって大きく3つに分類できます。

法定通貨担保型
- 代表例:USDT(Tether)、USDC(Circle)
- 発行者が銀行口座や証券口座に「実際のドルや国債」を保有して担保
- ユーザーは「1USDC = 1ドル」と信頼して取引可能
- 世界の取引所や決済で最も多く利用されている
メリット:わかりやすく、価格が安定
デメリット:発行主体を信頼する必要がある(中央集権的)
暗号資産担保型
- 代表例:DAI(MakerDAO)
- ETHやUSDCなどを担保にして、スマートコントラクトで自動発行
- 価格を安定させるために 過剰担保 が必要
(例:100ドル分のETHを預けて、70ドル分のDAIを発行) - 中央管理者が存在しないため、分散性が高い
メリット:中央管理者がいない「純粋なWeb3的通貨」
デメリット:仕組みが複雑で、効率が悪い(資産をロックする必要がある)
アルゴリズム型
- 代表例:かつての Terra/UST(2022年崩壊)
- 需要と供給を自動調整する仕組みで安定させる試み
- しかし実際には市場のパニックに耐えられず、大規模に崩壊
メリット:理論的には最もスケーラブル
デメリット:実績的にほぼ失敗しており、信頼性に欠ける
代表的なステーブルコイン比較
コイン | 発行方式 | 発行主体 | 流通量(2025年時点) | 主な利用シーン | 注意点 |
---|---|---|---|---|---|
USDT | 法定通貨担保 | Tether社 | 最大規模(約1,200億ドル超) | 取引所の基軸通貨 | 準備資産の透明性に議論あり |
USDC | 法定通貨担保 | Circle社(米規制下) | 約400億ドル | 規制対応、決済利用 | 米国規制次第で影響 |
DAI | 暗号資産担保 | MakerDAO(分散型組織) | 約50億ドル | DeFi運用 | 過剰担保が必要、仕組み複雑 |
「規模ならUSDT」「規制・信頼性ならUSDC」「分散性ならDAI」と覚えると整理しやすい。
実際のユースケース
ステーブルコインはすでに世界で実用されています。
国際送金
- 銀行を経由せず、数分で海外に送金可能
- 送金手数料も数十円レベルで済む
- 新興国やインフレ国では「デジタルドル」として広がっている
DeFi(分散型金融)
- レンディング(貸し借り)やステーキングで利息を得る際の「基軸通貨」
- DeFiプロトコルの流動性プールに必須の存在
決済
- オンラインショップや実店舗で「ドル建て決済」に利用
- 特に「1ドル = 1USDC」と直感的に理解できるのが強み
メリットと課題
メリット
- 価格の安定性:1ドルに連動するため、安心して決済や送金に使える
- ブロックチェーンの利便性:24時間365日、即時で低コストの取引が可能
- 国境を越えた利用:銀行口座がなくても使える
課題
- 規制リスク:各国政府がルールを定めつつあり、今後の展開に影響
- 発行体への信頼性:特にUSDTは「本当に全額裏付けがあるのか?」と疑問視されてきた歴史がある
- 分散型の難しさ:DAIのように仕組みが複雑だと一般ユーザーには理解されにくい
今後の展望
- CBDC(中央銀行デジタル通貨) の登場と競合する可能性
- 大手企業や国がステーブルコインを採用すれば、利用は一気に広がる
- 規制による透明性向上で、より安心して使える時代が来るかもしれない
まとめ
ステーブルコインは、Web3の世界における「実用通貨」として確固たる地位を築きつつあります。
- USDT → 世界最大の流通量、事実上の標準
- USDC → 規制に強く、企業や決済分野で注目
- DAI → 中央管理者がいない「Web3らしい通貨」
ビットコインやイーサリアムが「投機対象」として注目される一方で、ステーブルコインは「利用するためのインフラ」。
今後のWeb3やデジタル金融の発展には欠かせない存在です。
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